43 魔界の民は……幸せだったのだろうか?
第Ⅱ部 スタートしました!
もうここまで来たら、平成の男子校ネタ全開で行きますw(←やっぱ草生やしますね)
下ネタに『ドン引き上等!』なんて……言えませんよ、はい。書けますけど。(←2回目)
貴重な時間を割いて読んでいただいた読者の皆様に、最大の感謝を! ありがとうございます!!
ヤマコーとの決戦はある意味で色々なものを魔王にもたらした。
まず、魔王こと大空碧人が高校サッカー界で有名になった。
試合観戦に来た関係者から、噂が瞬く間に広がった。ごぼう抜きドリブルやループシュートの映像がSNSで拡散され、今や魔王は時の人だ。
今朝も校門前には魔王を写真におさめようと数人がたむろしていた。
「ファンですっ」
飛び出してきた見知らぬ女性から握手を求められる。
教室に着くと、クラスメイト達からは、
「おまえ今日も写真撮られてんな」
「握手した子かわいくね?」
などと、からかわれる。
部活でグランドに行くと、引退が伸びた3年が精力的に活動をしていた。
魔王を見る度に笑顔で声をかけてくれる。
もともとキボコーサッカー部は仲が良い集団だったが、それに輪をかけて結束力が高まった。
皆、楽しそうにボールを蹴る。集団への愛着が増すと、より力を発揮するのがティーンエイジャー。後日開催される決勝トーナメントへ向けて、部員達は強度のある練習に取り組んだ。
笑顔と真剣さ、チームの士気。これらがバランスよく並び立つことを悟った魔王には、心境に大きな変化が起きていた。
魔王は過去を振り返った。
長きに渡り魔界で暴虐の限りを尽くしてきた魔王。
気にくわなければ即処刑。ムラムラっとすれば後宮のメスを抱く。失敗した者には厳罰(死罪)を与え、それを見せしめにする。
笑顔を見せることはなかった。配下に恐怖を植えつけることが、魔界統治の基本だった。
その結果――
魔王は怖れられていた。
誰しもが魔王の機嫌を窺がう。
処刑を言い渡された際に取り乱す敵、配下。媚びを売る後宮のメス。
いつもどこか、ピリピリしていた。
魔界の民は……幸せだったのだろうか?
否。幸せなはずがない。
そうして至るこの考え。
〝魔界環境は劣悪だ〟
魔王はハッと後ろを見た。
癖だ。誰かに狙われていないか。処刑された者の怨念が魔王を襲ってこないか。復讐されないか。
目をこらしても、暗殺者はいない。ここは地球であり、ジャパンだ。
背後に広がる橙色の夕空。サッカーゴールが地面に影をのばしていた。
談笑するチームメイト達。サッカーの戦術を確かめ合っている者達。下ネタで盛り上がる早坂。ぶひーぶひー息荒く喋る部多谷。そして、サッカーボール。
魔界にはない、平和な光景がそこにはあった。
歴代最高の魔界統治者と謳われていた魔王。
でもそれはへつらいだった……、又もや魔王はハッとする。
今度は、後ろを確認しなかった。
ここは魔界ではない。ヒューマンが統治する世界だ。
ヒューマンは下等生物……幼少期よりそう教え込まれて育ってきた。
だが、違う。
ヒューマンは、下等ではない。むしろ、上等だ。
相手を思いやる心を持ち、誰かを愛し、共に喜ぶ。ときに怒り、嫉み、罪を犯す者もいるが、魔物の比ではない。
そうして、魔王は思考のクライマックスへと到達する。
それは、魔王であった己に対する自己否定。
最低の下等生物は、……吾輩、魔王だ。
早坂が魔王を呼んだ。
「碧人ぉ、明日、合コンしよーぜ」
だが、絵に描いたような平和なヒューマンの世界において、ある事が着々と進んでいた。
魔王の転生が原因の一つである。
そのことをまだ魔王は、知らない。




