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41 幕間 勇者アオ その1

◇ 幕間 勇者アオ ◇


「退屈だ」

 脱いだ兜をくるくると回しながら、アオは呟いた。


 場所は魔王城である。正確に言えば、元・魔王城。今は勇者用のお城に築造し直してある。

 魔王が住んでいた頃は闇に包まれてもなお不気味さと気高さ、美しさが相まって荘厳とした趣きのある城であったが、勇者城は金ぴかに輝いている。ド派手だ。

 日本の金閣寺のような情感はそこにはなく、金と権力を見せつけるような悪趣味が目立った城であった。


 この城をつくるために、多くの村人達を強制使役した。

 魔王を倒したアオの居城をつくるために、当初は嬉々として築城に参加していた村人達であったが。アオの人使いが劣悪な労働環境を生み(サボる者には容赦ないムチ打ち、場合によっては極刑。しかも無報酬)、遁走をはかる村人が激増した。

 当然のようにアオはその者達を捕縛し、見せしめのために死刑及び連座として家族や同族の者達を次々と殺していく。


 血なまぐさい経緯があった上で、キンキラキンに輝く勇者城は出来上がった。

 かつて魔王の玉座があった場所に、勇者も黄金の玉座を置いた。剥いだ魔物の皮ばりのオットマンに足を投げ出した姿勢のアオは、繰り返した。


「退屈すぎる」


 くるくる回していた兜が大理石の床に落ちた。カツーン、と音を響かせる。

 ちっ、と舌打ちしながら、条件反射でアオは兜を蹴ろうとした。

 この時にアオはふと感じた。


 ――最近、サッカーしてねえな。


 転生前のアオは日本の高校サッカー部であった。

 まあまあのレベルのサッカーを幼少期よりやっていた。受験の際はサッカーを控えたこともあるが、基本はサッカーボールが常にある日常であった。


 ムクムクと湧く感情があった。

 性欲ではない。美人と評判の村の女を夜な夜な抱くアオにとって、これもまた退屈になりつつあることではあるのだが。


 サッカーボールを蹴りたい衝動が、今、まさに彼の心の内でメキメキと嵩上がっていたのである。

 蹴った瞬間の、どむっ、という感触がたまらないご馳走に思えてきたアオは、興奮のままに先ほどよりも早いスピードで兜をクルクル回す――。


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