22 魔王は自分を正当化できないことに苛立った
魔王はただ1人、部室へと向かっていた。
他の部員はグランドをリフティングしながら10周している。美神の攻撃をブロックできた魔王だけが、即時帰宅を許されたのだ。
グランドであがる怨嗟の声。愛車のフェアレディZでさっさと帰ってっしまった美神には、彼らの鬱積した想いは一切届かない。
魔王は彼らに同情しない。
もしもこれが魔界での出来事ならば、彼らの命は露と消えている。軍の士気を高めるために、たとえゲームであっても参加者は命を賭けるのだ。××××我慢どころではない。
「1週間なんて我慢できねーよー」
「机にあたった弾みで出ちゃったらどーしよ」「おまえそれ教室で?」
「そもそも1週間は無理だって」
「ママンとお肉食べる予定がぶひー」
魔王はちょっとだけ、彼らを哀れに思ってしまった。直後、激しく頭を振る。
シンパシーを抱く余地などないではないか!
勝てばいい。自分の生命をもって挑むほどの意気込みで勝負にのぞむべきだ。
彼らにはそれだけの気概が欠けていた。所詮はヒューマン、下等生物の極みだ。
そう、魔王は自分に必死に言い聞かせる。
部員達の表情は、処刑間際の囚人を思い起こさせた。生に未練を残したまま断頭台へと運ばれる、まさにギロチンが落ちる直前の、最後の呻き、嘆き、叫び……。
(――)
魔王は自分を正当化できないことに苛立った。




