19 ジェントル・ハード・クラッシャー藤堂
1番手はキャプテン藤堂。
187センチの大型センターバック。守備の司令塔だ。
幼少期よりサッカーにのめり込み、優れた選手だけを選抜するサッカー育成プログラム・トレセンで鍛えられた能力値は、キャプテンを務めるだけに伊達ではない。
「お願いします」
一礼して、キャプテン藤堂はボールを美神にパスする。
途端に、キャプテン藤堂の顔つきが変貌した。
す、と目をすぼめ、半身で腰を落とす。両腕をだらりと下げた姿勢には余分な力が入っていない。
相手のどのような機敏な動きに対しても、俊敏なる反応と鉄壁を持ってガードする。それが彼の持ち味だ。
攻撃相手をリスペクトしたうえで、強烈なタックルを見舞わせる。そのため、他校のサッカー部員からは『ジェントル・ハード・クラッシャー』と恐れられていた。
ペナルティエリアのライン上(ゴールから16mほどの距離)で、キャプテン藤堂と美神が相まみえる。
美神が足もとのボールを小刻みに触りながら、じりじりと藤堂との距離を詰めてきた。
並みのディフェンダーならば、この〝じりじり〟に耐えられずに足を出してしまう。結果、攻め手にかわされるのがオチであるが、『ジェントル・ハード・クラッシャー』はひと味違う。
ボールを間接視野で捉えながら、彼は美神の上半身を注視していた。
攻め手が左右のどちらにフェイントするかは、上半身の向きによる。
人間ならば右に胸を向けながら左に走ることは難しい。それを容易く成しえるのは、どこぞのコメディアンぐらいだろう。
正対していた美神の上半身が、一瞬、右を向いた。
キャプテン藤堂はそれを見逃さない。
タックルするタイミングが来た。美神の進路に身体を捻じ込むように、寄せ――
ぼよよん。
美神の白シャツのボタンが弾け飛びそうだった。
ゆさゆさっぷりが、『ジェントル・ハード・クラッシャー』である前に、いちオスであるキャプテン藤堂を崩壊させた。
ハードがソフトになる。
キャプテン藤堂はあっさりと美神にかわされた。
ゴールキーパーもゆさゆさに目を奪われている隙に、
バスッ
美神がシュートしたボールがゴールネットにくるまれた。




