その世界、挨拶がセクハラギリギリなんだが!?
目が覚めた神原ユウトは、わけもわからないまま、制服を着て学校へ向かっていた。
見慣れた通学路、見覚えのある制服、だけど……何かがおかしい。
「よっ、ユウトー!」
そう声をかけてきたのは、クラスメートの佐々木レン(♂)。
突然、彼は笑顔で腕を広げ――
「ほら、ハグしよ!」
「ちょっ、え!? おい待て!?」
ガッと抱きつかれたユウトは、動揺しながらもレンを突き放す。
「お前、何してんだよ!?」
「え、朝の挨拶じゃん?」
「どこの世界に男子同士で朝からハグする文化があるんだよ!」
「ここだけど?」
それが、この世界の“常識”だった。
そして、次に現れたのは、美少女・一ノ瀬ヒカリ(♀)。
「あ……おはよう、ユウトくん……///」
顔を赤らめながら近づいてくるヒカリ。
ユウトが「待って、やばい気がする」と直感した時には、すでに彼女の唇が頬に当たっていた。
「っ!?!?!?」
(……なにこの世界……)
心の中で絶叫するユウトだったが、さらなる地獄が彼を待っていた。
放課後、クラスの女子に囲まれた彼は、ある女子にこう言われる。
「ユウトくん……『おつかれの挨拶』は“しっかり両手で”って言ったよね?」
「何を!? 誰が決めたそのルール!!!??」
その日の夜、帰宅したユウトは、台所でエプロン姿の“従姉”と鉢合わせた。
「おかえりなさい、ユウト♪ 今日の夕食は王宮風ローストビーフですわよ」
「……王宮風?」
「えっ!? ち、違いますわ!家庭的な味付けという意味ですっ!」
彼女は慌てて取り繕ったが、フォークとナイフを完璧な手付きで並べているあたり、どこか庶民離れしている。
ユウトは思う。
(この人……絶対、只者じゃねえ……)
しかも翌朝、目が覚めたユウトの布団の中に、なぜか彼女が――。
「ユウト……スキンシップの文化に慣れていただくため、寝起きの密着訓練を……♥」
「いやいやいやいやいや!!どこの訓練だよ!!!」