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前世で報われなかった神々が人間に転生して幸せな恋をします。【GRASSBLUE last 碧草日記】  作者: ほしのそうこ
女王特権で推しと結婚するなんて、はしたないですか?(後)sideグレス
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貴女を愛してもいいですか?

「……と、いう、お話なのでした……」




 そういうわけで、私室にて彼とふたりきりで過ごすことになったわたくしは、この十年間のわたくしの心境を一方的にお話しする。そういう行動に走ったのでした。




「こ、こんな長い語りを傾聴くださって、ありがとうございました……」




 赤裸々に話した上にかなり長かったので、恥ずかしくてたまらないです。テラ様はすっかり苦笑して、首を横に振りました。うう……わたくしはまだ、ノア様のようにはテラ様のお気持ちを察することが出来ません。首を横に振る、否定。それは、わたくしの言動のどの部分にかかっているのでしょうか?






 さて……とりあえず、必要な全てをお話しすると、さっそくノア様の危惧した通り。わたくしはそれ以降、何も話せない彼に何をお話しすれば良いのやら、わからなくなってしまいました。このままわたくしが黙っていては、彼を不安にさせてしまうのではないでしょうか。






 わたくし達は寝台の淵に並んで、腰を下ろしていました。わたくしは無言のまま、どれほど、彼を惚けて見つめてしまったでしょう。こればかりは許していただきたいです。何せ、十年想い焦がれ続けていたお方と、このようにお顔を近付ける機会を得たのですから……。




 そうしていて、ふと……一番大切な気持ちを、心からの言葉にしては、まだ伝えていなかったのではないでしょうか。そう、思い至りました。




「テラ様……わたくしは、剣闘士として活躍しているあなたの御姿に見惚れました。けれどそれ以上に、ノア様とご一緒に旅をして、本当に自分がしたかったことを見つけられて。自分を表現することを楽しんで……そうして、心からの笑顔を見せてくださった。あの時のお顔が、わたくしには何より愛しく映りました。テラ様のあのようなお顔を、誰より近くでずっと見つめていたかった。……けれど、わたくしとこの国でずっと一緒にいると、テラ様はその楽しみを続けられません」




 くどいようですが、わたくしは、剣闘士を楽しんでいない彼に何も……他の道や可能性を示すという手助けをしてきませんでした。今のテラ様を目覚めさせてくださったのは、ノア様との出会いがあったからこそ。残念ですけれど……ノア様と引き離してわたくしとだけ共にあるとしたら。わたくしにとって何より愛おしいテラ様の笑顔も人柄も、今のまま保たれることはないのではと思うのです。




「だから……わたくしは、テラ様の帰る場所になりたいのです。願わくば、あなたとの子を授かって、この国で育てて。テラ様は今まで通りに世界を巡って、帰り道の先にいるのがわたくしであり、この国でありたい。それが、わたくしの本当の願いです……」




 テラ様から目を背けないままひと思いに告げて、彼が自身の膝の上に置いていた握り拳にわたくしの手を重ねました。




 ……どれくらい、経ったでしょうか。ほんの一瞬だったようにも、数刻も経ったようにも思えます。確かなのは、その時間というのは、彼が決断に至るまでに必要だったということだけです。






 テラ様は不意に、わたくしの前に身を乗り出して、両肩を掴み。わたくしを寝台に倒しました。先ほど抱きすくめられた時のような荒々しさはなく、優しい手つきでした。




 光源との位置関係から彼の顔には影がかかり見難いですが、目の中に水分を湛えていて、今にも決壊して溢れてしまいそう。




「テラ、様……?」




 呼びかけると、テラ様はぎゅっと目を瞑り、激しく首を横に振りました。水滴が飛び散ってひとしずくだけ、わたくしの頬にも触れました。






 思い切って、勇気を出して。テラ、と呼びかけると。彼は、今度は肯きました。「そう呼んでもらえた方がテラは嬉しいんだと思うので」……いつかノア様がおっしゃっていたことを信じて、そうしてみたのです。





「テラ……わたくしは……あなたを愛してもいいのですか……?」




 そう伝えると、彼は右腕でぐいと自分の目元を一気に拭って、はっきりとした目で頷いて……その瞬間に、今度はわたくしの目尻からあふれ出したものを指先で拭ってくださいました。




 わたくしは彼の首の後ろへ腕を回し、自ら抱き寄せて彼を求めました。その時はただ夢中で、事が終わって彼の体温を感じまどろみながら、彼の想いを想像していました。






 きっと……彼は不自由な体に生まれて、その体に叶う限りの幸福で満足しようと、諦観しながら生きてきたのではないでしょうか。




 ノア様との出会いによって生きがいを見つけましたけれど、彼の憧れるのはそれだけではなく。誰かと愛し合い、子を成し、ごく普通に家族を持って暮らす……そんな人生に焦がれていたのかもしれない。






 だとしたら……たとえ、女王として急き立てられたからとか、邪な経緯があったとしても。彼を慕う数多の方々の中で、最初に勇気を出して想いを伝えたのがわたくしなのだから……わたくしも、彼に選んでいただけた。そう、思ってもいいですよね?

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