表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/106

誰のせい

「みんな、ヤッホー!」

と、いう弾けた声とともに入ってきたのはノーラン様。


普通の挨拶もできないノーラン様だが、見た目だけは、目がつぶれるほどにまぶしい。


人間離れした美貌に、銀髪に輝く、さらさらの髪。

今日もきらきらしたエルフ感満載だ。


が、なんでいるの!? 

他国に行ってるはずじゃないの? 

いるはずないわよね。いてほしくないわね。あ、私にだけ見えた幻覚かしら?


と、現実逃避していたら、

「おい、ノーラン。何故ここにいる?」

と、ロジャー様が不審げに言った。


あ、やっぱり他の人にも見えるのね……。


「だって、アリシアさんの送別会とビーさんの歓迎会だから! ぼくも参加したいんだもーん」


「いや、そうじゃなくて、ノーランは今はロンシャン国にいるはずだろう? 魔獣はどうした? まさか、途中で放り出して帰ってきたのか……!?」


鋭い視線をノーラン様にぶつけるロジャー様。


あり得る……。


「もうー、失礼だな、ロジャー君は! ぼくをなんだと思ってるの!? 仕事は、ちゃちゃちゃっと終わらせてきたよ。よわっちい魔獣で大騒ぎしてただけだし。ね、ミケラン」

と、隣を見たノーラン様。


え? ミケランさん、いたの……?

影が薄くて気づかなかったわ。

なんだか、一気に小さくなってない?


くまのできた目で、ミケランさんは言った。


「ノーラン様は鮮やかに魔獣を封印されました!」


「だが、3日後のロンシャン国の王子の結婚を祝うパーティーへの出席もすると聞いている」


「あー、そっちはパス。だって、知らない王子をなんでぼくが祝わないといけないの? あ、でも、ぼくのかわりにレオが行くことになったから。ぜんぶ、ミケランが手配してくれたんだよ。ね、ミケラン」


なるほど……。ミケランさんは、偽エルフに振り回されて、疲労のあまり、こんなにやつれてるのね。


しかも、偽エルフの代わりに王太子様が行く話をつけるだなんて……。

想像しただけで、心労がすごそうだわ。


それに、ノーラン様の代わりをするなんて聞けば、王太子様の心も荒れているかも……。

しばらく会いませんように。


「お疲れ様です、ミケランさん。どうぞ、沢山食べっていって、栄養を補給してくださいね……」


「お優しい言葉をありがとうございます。ルシェル様」


ミケランさんがやつれきった顔で微笑んでくれた。

なんだか、顔色が悪いわね……。


見ていられないわ!


「ミケランさん、勝手にごめんなさい!」


私はそう言うと、緊急事態とばかりに、ミケランさんの手をとった。


「え? ルシェル様……!?」

と、驚くミケランさん。


「すぐに終わりますから」


私は、ミケランさんの手を両手でにぎりこみ、直接、癒しの力を注ぎこむ。


「あー、ルシェがミケランの手をにぎってる! ずるーい! ぼくも、にぎってー!」

と、わめく偽エルフ。


「今、癒してるから、黙って、ノーラン! 誰のせいで、ミケランさんがこんなに疲れてるのよ!」

と、注意する私。


「あ、私は大丈夫ですからっ! ルシェル様! 私なんかに貴重なお力を使ってくださるなんて、もったいないですからっ!」


焦った様子で断ろうとするミケランさん。


「ミケラン。遠慮せずに、ルシェルに癒してもらいなさい」

と、エリカ様。


「じゃあ、ぼくも、癒してよ、ルシェー!」


「ノーランは疲れてないだろう」

と、ロジャー様があきれたように言った。


「疲れてるよ! つよーい魔獣と戦ったんだもん。ぼく、へろへろだよー」


「嘘つけ。よわっちい魔獣って言ってただろうが!」


すぐさまロジャー様につっこまれているノーラン様。


「じゃあ、長旅で疲れたから、ルシェの癒しが欲しい!」

と、更にわめく偽エルフ。


うるさい! 集中できないじゃない!


「ロジャー様、それ、黙らせて!」

と、怒りのあまり叫んだ私。


「了解」


ロジャー様は、そう答えるやいなや、偽エルフの口をありあまる力でふさいでくれた。


「ん-、ん-!」

と、うめいているけれど、無視。


やっと、静かになったわ。


ということで、私は全力で癒しの力をミケランさんに注ぎ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ