怒っても……
お久しぶりです。
「ということで、ルシェには、『ぼくのルシェ。最高で賞!』に決定。あ、もちろん、優勝は別だから、まだわからないよ? 賞品はハンカチと一緒に後日、ぼくの気持ちがいっぱいつまった素敵なものを贈るね、フフ。ということで、ルシェ、おめでとう!」
「辞退します!」
即答した私。
「ダメだよ、ルシェ! 遠慮しちゃ、ダメ!」
「いや、全く遠慮じゃないわ! 賞も賞品も、心底、いりません!」
「ぎゃー、ルシェが反抗期だ! でも、かわいい! 大きくなったんだね、ルシェ。初めて会った時は、こんなちいちゃかったのに!」
と、親指と小指を広げて見せる偽エルフ。
ぴきっ……。
私のコンプレックス、身長のことを言ったわね!
「そんなに小さいわけないじゃない!」
偽エルフに向かって叫んだとたん、エリカ様の雷が落ちた。
「そんなことより、さっさと優勝を決めなさいよ!」
あ、勝負にうるさいエリカ様が、イライラし始めている。
これ以上、変なことで長引かせると、エリカ様のほうが偽エルフより面倒なことになるわ。
仕方ない。
「わかりました、ノーラン様。そのおかしな賞をいただきます。賞品は断固いりませんが。ということで、次にすすめましょう。あとは、ルビーさんとノーラン様の魔石だけです」
「そうだね。じゃあ、次は、大型新人……じゃなくて、訳あり新人のビーさん! お待たせ」
そう言って、ルビーさんに微笑みかけた。
は? 訳あり新人って、どういうこと?
ノーラン様を見れば、何か企んでいるようなほの暗い笑みを浮かべている。
ぞくっとした。
こんな顔をすると、人間離れした美しさが際立って怖い……。
ルビーさんは、果敢にも、ノーラン様を真っ赤な瞳で見返している。
視線がぶつかるふたり。
なんてかっこいいの、ルビーさん!
それに、初めて会ったのに、大魔王のノーラン様におびえない、この精神力!
やっぱり、王太子妃にぴったりよね!
思わず見とれていたけれど、さすがに心配になって、私はルビーさんに近寄り、ノーラン様からかばうように、ぴったりと寄り添って立った。
そのとたん、私の腕が目に見えない力でひっぱられて、気が付けば、私はノーラン様に寄り添って立っていた。
え、なんで……? と、思ったら、ノーラン様に小声で耳打ちされた。
「あのね、ルシェ。ビーさんに、あんなにひっついちゃダメだよ。触るのもダメ。もちろん、ひっつかれたり、触られたりするのはもっともっとダメだからね! わかった、ルシェ?」
え……?
この偽エルフ、一体、なにを言ってるの?
あまりに意味不明で、思わず、小声で聞き返した。
「なんで、そんなこと言うの?」
すると、偽エルフがこてんと小首をかしげた。
「ん-、ぼくが嫌だから」
「はああ!?」
つい叫んでしまった私。
まともに聞いた私が馬鹿だった。
ということで、ノーラン様を押しのけ、冷たい声で言った。
「では、ルビーさんの魔石の鑑定をお願いします。ノーラン様!」
「そうよ、早くしなさい! そして、早く優勝を決めなさい! ルシェばっかりに構うなら、これから、神殿に出禁にして、二度と会わせないわよ!」
と、エリカ様。
「おお、それはいいな! さすが、エリカだ」
すかさず、エリカ様に賛同するロジャー様。
「ふーん。そんなことしたら、ぼく、神殿、つぶしちゃうかも。そうしたら、いつでも、ルシェに会えるしねー」
さらっと恐ろしいことを言うノーラン様。
ノーラン様が言うと、全く冗談には聞こえない。
そして、また、話しがそれている。
しかも、ルビーさんの番なのに。失礼でしょ?
ものすごく腹が立ってきた私は、びしびしびしっと強い口調で言った。
「ノーラン様! 早く、ルビーさんの魔石を見てください!」
「うわ、ルシェが怒った! うん、その顔もかわいいね」
はあ? 私は更に怒って、きつく呼びかけた。
「ノーラン様!」
「はあーい、ルシェ!」
と、能天気な返事。
しかも、極上の笑顔つき。
一気に力がぬける。
偽エルフに怒っても、疲れるだけだ。
ミケランさんが気をきかせて、ルビーさんの魔石をノーラン様の前に持っていってくれた。
「こちらがルビーさんの魔石です」
その魔石を見たとたん、ノーラン様が意味ありげに笑った。
「へええ。ビーさんの魔石、おもしろいね。予想以上かな……」
予想以上……?
それって、どういうこと?
久々に更新しました。前回が1月だったので、なんと半年もたっていたとはびっくり……。
あと24話くらいで完結なので、できるだけサクサクと更新していきたいと思っています。
読みづらいところも多々あるかと思いますが、よろしくお願いします!