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うらやましい

「ということで、なかなかいい魔力じゃない? で賞のミケランには、何をあげようかな……。あ、そうだ!」

と、緑色の瞳を輝かせ、美しい笑みを浮かべた偽エルフ。


無駄にきらきらしすぎて、偽エルフがまぶしすぎる。

自分の目をかばうために、極限まで目を細めて見ていると、ノーラン様は、ポケットに手をつっこんだ。


そして、またもや、ポケットよりずっと大きなノートみたいなものをとりだした。


ルビーさんが驚いたように目を見開いている。

まあ、なかなか慣れないわよね。あり得ない光景だもの……。


鼻歌まじりに、そのノートらしきものをめくっていくノーラン様。


「あ、あった! これこれ!」

と、声をあげた。


そして、ふっと指先に息をふきかけたかと思うと、その指先で、ページの端を軽くなぞっていった。

すると、そのページだけがぱらりと外れた。


「さすが、ノーラン様。指先一つで紙をきるとは……」


ミケランさんが感嘆したような声をもらす。


私も初めてくらい、ノーラン様に感心した。


だって、これは便利だから。

はさみとか、ナイフとか、いらないんじゃない?

いいなあ……。


でも、一体、何をしているのかしら?

と、不思議に思った時、ノーラン様は、そのノートから離したページを意気揚々とミケランさんに差し出した。


「ミケラン。これが、なかなかいい魔力じゃない? で賞の記念の品だよ! どうぞ、あげる」


「ありがとうございます! ノーラン様!」


感極まって両手で受け取るミケランさん。


が、一体、それは何……? 

黒い線が何かを描いているが、まるで、わからない。


私には、落書きにしか見えないけれど、魔術に関する何かかしら?

と思った時、エリカ様が言った。


「ねえ、その落書きはなんなの、ノーラン?」


うん、やっぱり、そう思うよね……。


「ちょっと、エリカさん! 落書きなんて失礼だな。これはね、ラーとリーとローの似顔絵なの。それも会心の出来。よく描けてるでしょう?」


「ラーとリーとロー? なに、それ?」 


「もちろん、ぼくのところにいるかわいい魔獣たちだよ!」


エリカさんが顔をしかめた。


「は? あの魔獣たち、まだいるの? しかも、変な名前までつけて! ペットじゃないっていうの。早く魔獣の森に返しなさいよ、ノーラン!」


エリカ様に同意しすぎて、激しくうなずいてしまう私。

もちろん、エリカ様の言うことには全て同意のロジャー様も、エリカ様の隣で激しくうなずいている。


すると、ぷーっと頬をふくらませた偽エルフ。

そんな顔をしても、変な顔にならない。ずるいわね……。


「変な名前じゃなくて、素敵な名前だよ? それに、帰りたくないのに、無理強いできないでしょ? いい子たちだし」

と、ノーラン様は不満げに言った。


ああ、また、その話……。

魔獣の名前の話も、ノーラン様にしか懐いていない魔獣の話もすでに一回終わっている。


とりあえず、先に進めてもらおう。

ということで、2人の話しをぶったぎるように口をはさんだ。


「それで、ノーラン様。その魔獣たちの似顔絵が、なんでミケランさんへの賞品なんですか? もしかして、その絵に魔力がこめられているとか? 魔獣だけに魔除けになるみたいな……?」


「あ、ルシェ! もしかして、ぼくの絵が素晴らしすぎて、魔力で描いたと思ったの?」


「いや、それはないです。ただ、こんな落書きみたいな絵をあげようとするからには、何かしら、魔力がこもった、お守り的な特別なものかなって思っただけで」


私の言葉に、エリカ様が大きくうなずいた。


「そうよね。特別な力がこめられているならともかく、そんな落書きだけもらっても、……まあ、ゴミよね」

と、エリカ様が正直すぎる意見を述べた。


「ああ、そうだな。ゴミだ。エリカの言う通り、ゴミだ!」

と、ロジャー様。


そう、ロジャー様は、エリカ様に絶対服従のため、エリカ様の言葉を繰り返す癖がある。

でも、そこだけ繰り返したら、いくらなんでも、ノーラン様が気を悪くするのでは……。


そう思った瞬間、

「みんな、ひどーい! ぼくの絵はゴミじゃない! 上手く描けたから賞品にしたのにー!」

と、ノーラン様が叫んだ。


ということは、つまり、この絵に、なんの効果もないってこと……?

ミケランさん、賞品がこれではがっかりするよね……。


気の毒になって見ると、目をきらきらさせて、絵をじっと見ているミケランさん。


え、まさか、喜んでるの……?


「ミケランさん……。その絵、嬉しい……?」


「もちろんです! ノーラン様の直筆の絵がいただけるなんて感慨無量! 家宝にします!」


家宝? これが……?


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