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それ、うれしい?

「ちょっと、ルシェル? こんな大量のお菓子をひとりで食べるつもりだったんじゃないでしょうね!?」


そう、エリカ様は私に甘いものを食べることを制限している。

というのも、甘いもの好きの私が、この神殿にきたときみたいに、まんまるくなることを心配しているから。


「もちろん……、皆でわけるつもりでした」


が、まあ、ちょっとは、多めにもらってもいいよね……?


「ノーラン。そのお菓子はアリシアへの賞品にしていいわ。ルシェルは、そうね……。これをひとつだけもらいなさい」


そう言って、一番小さな焼き菓子を指差すエリカ様。


「ええええ!? たったそれだけ? こんなにたくさんあるのに? 私がもらったのに!?」


悲鳴をあげる私。


「あのね、ルシェル。油断すると、すぐに、ルシェルはこの神殿に来た時みたいに、押せば転がっていきそうなほど、まんまるくなるわよ。私は、ここへ来た時のまんまるいルシェルを忘れた日はないわ!」

と、力強く言うエリカ様。


「押せば転がる……?」

ミケランさんが首をひねっている。


ノーラン様がくすっと笑った。


「転がるルシェ、おもしろそー! きっと、かわいいだろうし、どこまで転ぶか転がしてみようかな」


「それは、やめて」

と、偽エルフに注意しておく。


魔王のような偽エルフなら、本当にやりかねない。

冗談なのか本気なのか、まるでわからないし。

 

そこで、エリカ様がミケランさんに言った。


「ミケラン君、今後、ルシェルに何か贈りたいと思ったのなら、野菜にしてね。特にリュリュがおすすめよ。毎朝ジュースにして飲めるから」


「は、はいっ、わかりました。大聖女様!」

と、ミケランさんが返事をした。


ちょっと、エリカ様、なんて恐ろしいことを言うの! 

とにかく、これ以上、リュリュの話は危険だわ!


ということで、話しを変えるべく、ノーラン様に声をかける。


「ノーラン様! アリシアさんの次は、どの魔石を見ますか?」 


「あれ? 急にルシェがやる気をだしてきた! もしかして、本当に、ぼくの助手になりたくなった? うれしいな!」


「いや、それは絶対にないわ」

と、即答する私。


「遠慮しなくてもいいよー。ルシェの魔術院への移動なら、いつでも大歓迎だからね!」


さすが、偽エルフ。話しをまるで聞いてないわね。

そもそも、聖女なのに、魔術院で働くっておかしいでしょう?


が、ノーラン様は上機嫌で言った。


「じゃあ、アリシアさんの次は、その隣のビーさん……、じゃなくって、ひとつとばして、ミケランの魔石を見てみよう!」


え? なんで、ルビーさんを後回しにしたのかしら?


ふと疑問に思ったけれど、名前を呼ばれたミケランさんは、恥ずかしそうに自分の魔石をノーラン様の前に差し出した。

灰色の魔石に、闇のような色がまじっている。


これが、ミケランさんの魔力の色かしらね。


「恥ずかしながら、時間内に魔力を込め終わりませんでした……」


「あ、いいよ~。速さの勝負じゃないからねー! じゃあ、ミケラン、魔石を胸の前で持ってみて」

そう指示をだす。


言われたとおりにするミケランさん。


「じゃ、手を離して」


え? それ、下に落ちるわよね?


魔力がこもったら、重くなるから、聖女の力が入った時みたいに浮くわけじゃなし。


ミケランさんもそう思ったらしく、ちょっと、とまどっている。


「あ、大丈夫だよ、ミケラン。危ないことはさせないからね。それとも、ぼくが信じられない?」


ええ、全く。と、いう気持ちをこめて、私はうなずいたけれど、ミケランさんは、すごい勢いで、ぶんぶんと首を横にふった。


「とんでもないです! ノーラン様のことは、信じきっております!」


「良かった! なら、手を離して。ほら、どーぞ」


「わかりました! では、いきます!」


そう言って、手を離した瞬間、あっという間に落ちていった。


が、床すれすれで止まった。ふわふわと浮いている。

見ると、ノーラン様が魔石に向かって指を差していた。


「ええと、何してるの?」


「指の先からでる、ぼくの魔力を、ふわっと床の上にしいて、魔石の重さをはかってるの。……うん、密度が濃いから、なかなか、いい魔力だね」


「ありがとうございます!」

ノーラン様の言葉に、頬を染めるミケランさん。


「ということで、ミケランにも賞をあげるね。題して、なかなかいい魔力じゃない? で賞です! おめでとう!」


「ありがとうございます! 嬉しいです、ノーラン様!」

興奮するミケランさん。


ミケランさん……。

疑問符が入るような変な名前の賞をもらって、本当にうれしいの……?


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