いらない
「はーい、みんな、おつかれさまー! じゃあ、ひとつずつ、魔石の状態をチェックしていくね。まずは、一番に終わったエリカさん」
エリカ様の魔石は、きらきらと光輝いている。
ノーラン様が指をさしただけで、魔石がふわふわと浮いた。
「さっすが、エリカさん。上質の癒しの力が魔石いっぱいに入ってる。聖女の力でものすごく軽い。ちょっと、魔力で指示するだけで浮くし。うん、最高!」
「なら、やっぱり、エリカが優勝だな。ノーラン、ほら、早く優勝はエリカだと言え!」
と、ロジャー様がノーラン様にせまる。
「だから、まだ、全部見てないから、決められないもーん。あ、それに今、ロジャー君がぼくを急かしたから、また減点ね」
「はああ? なんだと!」
「キャー、怖い! ロジャー君に脅されたってことで、また減点! フフ」
と、楽しそうな偽エルフ。
怖がっている人が最後にフフって言うかしら?
「だまって、ロジャー。ノーランの思うつぼよ! それに、私は絶対的な自信があるから、何も言わなくても優勝は私のものよ! 落ち着いて待ちましょう、ロジャー」
ロジャー様に落ち着いてと言いながら、ぎらつきすぎて、目力がすごいことになっているエリカ様。
というか、なんで、こんなおかしな勝負の優勝にそこまでこだわるの?
「さすが、エリカだ! なんてかっこいいんだ! これ以上、惚れたらどうしてくれるんだ、エリカ!」
と、身もだえるロジャー様。
ルビーさんとミケランさんがロジャー様から視線をそらす。
まあ、普通に怖いものね。直視するのが……。
ロジャー様はエリカ様が関わると、場所を選ばず、誰の前であっても、おかしくなるから。
おふたりとも、変なものを見せてごめんなさいね。
「次は、じゃあ、エリカさんの隣にいたアリシアさんの魔石を見るね」
ノーラン様はまた、指で指示をだしたが、魔石は浮かない。
聖女の力が込められていないから、軽くなってはいないみたい。
魔石の見かけも、普通の石のように灰色のままで変化はない。
「やっぱり、聖女の力がもうでなくて……」
と、少し寂しそうに言うアリシアさん。
「うん、でも、アリシアさんらしい、ほんわりあたたかい感じがする。だから、アリシアさんは、参加しましただけで、すごいで賞に決定! おめでとう、アリシアさん!」
それなら、普通に参加賞のほうが良くないかしら?
と、思ったら、アリシアさんが嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます、ノーラン様!」
無邪気に喜ぶアリシアさん。本当に、いい人よね……。
私なら、そんなのいらないって言うと思うわ。
「じゃあ、賞品は何にしようかな……。あっ、いいのがあった。これ、あげる!」
そう言って渡したのは花柄の箱……って、あっ、それ!!
「ちょっと、それ、ミケランさんから私がもらったお菓子じゃないの!」
思わず、大声をだした私。
「うーん、でも、そこにあったし?」
「置いてたの!」
「そう? でもほら、さっきも言ったけど、これ、ぼくがルシェに買ったようなもんだから。だから、返してもらってもいいよね? ごめんね、ルシェ。今度、また、並んで買ってくるからね。もちろん、ミケランが」
そう言って、にこっと笑う偽エルフ。
つっこむところが多すぎて、思わず口ごもっていると、エリカ様がすごい勢いで近づいてきた。
あ、……まずいわ……。