集中!
なんだか面倒なので、適当にしようと考えていたら、偽エルフが言った。
「あ、そうだ! ビリの人には、ペナルティとして、なにか、だしものをしてもらいます! ちなみに、ビリというのは、力の量ではなくて、やる気を感じられない人ね!」
えっ、この偽エルフ、人の思考まで読めるの? 怖い!
そう思って、ちらっとノーラン様を見ると、ものすごい笑顔で、こてんと首をかしげられた。
あー、やっぱり、私に言ったのね……。
だしものとか嫌すぎるし、とりあえず、ちゃんとしよう……。
「じゃあ、始めるから、ロジャー君、掛け声よろしく!」
「わかった。じゃあ、みんな、準備はいいか? ……はじめっ!」
と、ロジャー様が声を張り上げた。
一斉に、みんなが力をだしはじめたので、色んな光や色や気が飛び散る。
特に、キラキラした光がすごい。
もちろん、エリカ様だ。いきなり、全力で力をだしてるわね。
全く加減していないから部屋中に光がまっている。
「うわあ、エリカの力につつまれる。最高だな……」
恍惚とした声をあげる、気持ちの悪いロジャー様。
「ちょっと、ロジャー君。時間、ちゃんと見ててよ?」
すかさず、ノーラン様に注意されている。
「大丈夫だ、ノーラン。俺はエリカの力を堪能しながらも、仕事はきっちりやる」
そう、きっぱりと言った、ロジャー様。
ただ、時間を計ってるだけなんだけどね……。
あ、いけない、いけない。
どうも、まわりの状況に気が散るわ。
集中、集中!
私は雑念を振り払い、両手を魔石にかざして、力をいれはじめた。
が、ふと、目の端で何かが動いた。
見ると、ノーラン様の魔石がぐにょぐにょと、どんどん形を変えている。
今は、どうみても蛇だ。
とぐろを巻き、舌をちろちろだしている。
「ぎゃあっ!」
蛇が大嫌いな私は、思わず、悲鳴をあげた。
瞬間、みんながこっちを見る。
そして、息をのんだ。
「あ、ルシェ、怖かった? ごめんねー。すぐに、違うのにするからね」
そう言って、蛇のあたまのあたりをひとなでしたノーラン様。
今度は、猫みたいな形になった。しっぽをゆらゆらと揺らしている。
「ねえ、ノーラン……。なんで、次々、動物を作ってるの……?」
驚きすぎて、思わず、素の口調で偽エルフに聞いた私。
「ん-、だって、飽きちゃうから? だから、魔石にこめる魔力の質を変えながら、違う動物に変化させてたの。そのほうが楽しいでしょ?」
誰も何も言わない。
楽しいも何も、早く力をこめる競争をしてるんだよね?
なら、変化させようって普通は思わないよね?
まず、そんな余裕なんてないよね、普通はね……。
「さすが、ノーラン様! 私など、魔力をためるだけの魔石を動物に変化させることなど、到底できません! しかも、次々と魔力の質を変えながら、動物の種類を変えていくなんて信じられない! すばらしいです!」
興奮状態のミケランさん。
「そう? コツがわかれば簡単だよ? あ、ルシェ、知りたい? ルシェに教えてあげようっと」
と、偽エルフが言った。
「は? いやいや、そのくだりなら、ミケランさんに教えてあげようが普通の流れよね。そもそも、私、聖女だから。魔力はないから。教えてくれなくていいわ」
「えー、残念。あ、じゃあ、ビーさんに教えてあげようっと!」
いきなり、ルビーさんのほうに、流れ弾をあてるノーラン様。
「……え?」
名指しされ、驚いた顔をするルビーさん。
ほんと、偽エルフはとんでもないことを言うわよね。
ルビーさんに迷惑はかけられない。
ここは、びしっと言っておこう。