なぜ、参加?
「にぎやかな声がしたと思ったら……。今日は、結界用の魔石にルシェルが守護の力をこめる日のはずよね。…で、ノーランは、何をしてるの?」
エリカ様の鋭い視線がノーラン様を射抜く。
が、ノーラン様は相変わらず、のんきに答えた。
「その仕事は終わらせたもんね。だから、余興でもしようかなあって」
「ノーラン様は、ルビーさんにそこの魔石に力をこめさせようとしてるんですよ!」
私はすかさず訴えた。
「そう、題して、『力をくらべましょう』! エリカさんも参加する? あ、無理なら別にいいよ」
そう言って、こてんと首をかしげる、あざとい偽エルフ。
とたんに、エリカ様の目がぎらつく。
あ、嫌な予感……。
「無理なわけないでしょう。やるわ!」
と、エリカ様が即答した。
「ちょっと、エリカ様! 止めないのですか?」
「仕事も終わってるなら、いいじゃない? ノーラン、それ魔石よね? 私の分もだして!」
やる気満々のエリカ様。
「オッケー」
そう言って、ポケットに手をいれ、さっきと同じ形の魔石をとりだすノーラン様。
それにしても、エリカ様って勝負事が好きよね……。
と、その時、アリシアさんが手をあげた。
「ノーラン様。私も参加したいです!」
あの……、アリシアさん?
アリシアさんは聖女の力がなくなったから、引退するんだよね。
なぜ、参加? という思いで、アリシアさんを見ると、疑問をうけとったように、フフっと笑って答えた。
「だって、おもしろそうだから。私も参加したいの!」
「いいよ、いいよー。参加することに意義があるからねー。じゃあ、アリシアさんの分も魔石だすね」
と、ポケットから、また、同じ大きさの魔石をとりだした偽エルフ。
なんだか、インチキ手品師のよう。
すると、今度は、ミケランさんが手をあげた。
「私も参加させていただきたいのですが!」
え? ミケランさんは聖女じゃないよね? なぜ、参加?
「いいよ、いいよー。じゃあ、ミケランは魔力をこめてみてね」
そう言いながら、またもや、魔石をポケットからとりだした。
そして、ノーラン様は私のほうを見た。
「じゃあ、あとは、ルシェだけだ。ルシェも参加する? あ、でも、守護の力をこめたばかりだもんね。無理はさせられないよね」
「私は遠慮しておき……」
「もちろん、ルシェルもやるわよ!」
私の言葉を遮って、大きな声で答えるエリカ様。
「いや、私はちょっと疲れて……」
「そんな嘘をついても無駄よ、ルシェル! 結界には守護の力を使った。でも、今度は癒しの力をこめる。力の種類が違えば、あなたは大丈夫よね? なんたって、この二つの力に関しては、ルシェルは底なしなんだもの!」
まあ、その通りなんですが、底なしって、言い方……。
ほら、ルビーさんが驚いたような目で私を見ているわ。
バケモノみたいに思われたらどうするんですか?
「エリカの言う通りだ。ルシェルは底なしだからな! 自信をもって参加しろ、ルシェル!」
と、ロジャー様。
私は自信がなくて参加しないのではなく、面倒だから参加したくないんです……。
が、エリカ様の言うことは全て叶えたいロジャー様。
ここで反論すると、更に面倒そうな予感。
「わかりました……。参加します……」
力なく答える私に、満面の笑みを見せた偽エルフ。
「なら、ぼくとルシェの魔石は、特別バージョンのおそろいにしよ!」
偽エルフは鼻歌交じりに、ポケットから、更に大きな魔石を二つとりだした。
そんなおそろい、ほんと、やめて欲しいんですけど……。
お久しぶりです。長らく更新してませんでしたが、また再開します。どうぞよろしくお願いします!