題して
よろしくお願いします!
「余興とは…、一体、何をするつもり…ですか?」
私は、満面の笑みを浮かべる偽エルフに、恐る恐る聞いてみる。
「フフッ、ルシェったら、せっかちだね? でも、それは今からのお楽しみー。じゃあ、ビーさん、ここへ来て!」
え? ルビーさんに何をさせるつもり?!
名指しされたルビーさんが、警戒した顔で、ノーラン様を見ている。
わかるわ…。
今までの言動を見ていれば、不安しかないわよね…。
で、隣のアリシアさんは、…うん、楽しそう。
何が始まるのか、わくわくしてる感じ。
動きたくないルビーさんの腕をくんで、にこにこしながら、こちらに連れてきている。
雰囲気は、ほわっとしたアリシアさんだけど、驚くほど、力が強いのよね…。
「あの、ノーラン様。私もそちらに行ってもよろしいですか…?」
椅子から立ち上がりかけた姿勢のまま、祈るように手をあわせ、ノーラン様にたずねるミケランさん。
…あ、そうか。ノーラン様の指示で、座ったままだったのね…。
ミケランさんって、本当にいい人よね。
だって、こんなおかしな上司の、おかしな指示を忠実に守るんだもの。
「近くに来たいなら来ていいよ。なんでそんなこと聞くの? おかしなミケラン」
そう言って、笑った偽エルフ。
おかしなのは、あなたのほうです!
「ありがとうございます! ノーラン様!」
ミケランさんは、嬉しそうに言うと、とんできた。
いや、ミケランさん…。お礼を言ってる場合じゃないわ。
理不尽な指示をだし、だしっぱなしで忘れている上司を怒るところよ!
とまあ、私が怒ってもしょうがないので、ここは、余興とやらを素早く終わらせることに全力をそそぎましょう!
「じゃあ、余興のはじまり、はじまりー」
と、ノーラン様が、歌うように声をあげる。
そして、上着のポケットから、丸い石をとりだし、テーブルに置いた。
人の頭ほどある大きな石だ。
ルビーさんが、目を見開いて、ノーラン様のポケットを見ている。
まあ、初めて見たら、驚くよね…。
上着のポケットから、でてくる大きさの物ではないものね…。
そう、ノーラン様の衣服には、色んな魔術がしこまれている。
特に、ポケットは、どれくらいの容量が入るのか、想像もつかない。
以前、私の誕生日に、「ルシェ、お誕生日おめでとう。はい、プレゼント!」そう言って、ポケットから取り出したのは、私の身長の2倍ほど高さのある本棚だった。
まだ、子どもだった私は驚きすぎて、本棚を前に、しりもちをついたっけ…。
その驚き方がツボにはまったらしく、偽エルフは、その後、ポケットからやたらと大きなものをとりだし、私に見せるようになった。
が、人って、慣れるのよね…。
今なら、偽エルフのポケットから山がでてきても、驚かない自信がある。
「それで、この石をどうするんですか?」
と、早く終わらせるべく、司会進行を買ってでた私。
「ビーさんに、癒しの力をこめてもらいまーす! 題して、力を比べましょう!」
「…なに、それ…。題も変だし…」
心の声が、ぽろっと外にでた。
そのとたん、偽エルフが私の手をつかみ、私の顔をのぞきこんできた。
凶暴なほどの美貌。
思わず、鳥肌がたった。本能で、危険を感じる。
「ちょっと、離れなさい、ノーラン!」
なりふり構わず叫ぶ私。
「ねえ、ルシェ。なんで、そんな冷たい声で、冷たいことを言うの? ちっちゃくて、かわいいルシェが、どうして悪ぶってるの? あ、もしかして、反抗期?!」
「違います! 私は普通です。ノーラン様が変なことを言うから」
と、そこで、
「ノーランが変なのは、いつものことよ。ルシェル」
と、背後から声が。
見ると、エリカ様が部屋に入ってきたところだった。
もちろん、ロジャー様付きで。
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