大丈夫?
よろしくお願いします!
私は、結界の魔石に両手のてのひらを向けた。
まだ、守護の力を、出してはいないけれど、この時点で、聖女の力の気配を察したらしい魔石。ガタガタと振動をはじめる。
いつもなら、ここでミケランさんが魔石用の手袋をはめた両手で、がしっと押さえる。
で、私が守護の力をこめはじめる。魔石が大暴れ。ミケランさんが魔石と格闘しながら、おさえこむ。
…というのが一連の流れ。
が、偽エルフは宣言どおり、魔石を抑えるどころか触ろうともしない。
一体、どうするつもりかと思ったら、左手を魔石より30cmくらい上にかざした。
そして、ゆっくりと手をまわしはじめた。
「魔石よ、魔石~、ねーむれ、ねむれ~♪ 魔石よ、魔石~、ねーむれ、ねむれ~♪ ぐーっすり、こてんとおねむりなさ~い♪」
変なリズムの下手な歌が、部屋中に響く。
…この偽エルフ、ふざけてるのかしら?
と、思った瞬間、えっ?! うそでしょ?!
魔石が動かなくなった。
「…魔石に何をしたの?」
驚きすぎて、またもや、敬語がとんでしまう。
「催眠術みたいな感じかな? まあ、ぐっすり眠らせたから、ルシェ、安心して、お仕事してね?」
そう言って、私に向かってウインクをしたノーラン様。
ノーラン様のウインクで、魂を持っていかれる被害者は多数いるが、私にとったら、どうでもいい。
そんなことよりも、さっきから、変なことを言ってるわよね?
「あの…、魔石って眠るの?」
「そりゃあ、魔石くんだって眠るでしょ? だって、ルシェも眠るよね?」
え…?! 魔石が、眠ることって当たり前なの? しかも、何故、そこで、私…?
疑問だらけの私に、ノーラン様が更に不思議なことを吹き込んでくる。
「この魔石くん、ぼくの子守歌が気に入ったみたい。それに、ぼく、優しいから、手のひらから魔力をだして、魔力のおふとんを、魔石くんにかけてあげたんだ!」
子守歌って、さっきのへたくそな、変な歌のこと…? しかも、魔力のおふとんって、何よ?!
「魔石を眠らせるなんて、さすがです! それに、ノーラン様の魔力のおふとんをかけてもらえるなんて、魔石がうらやましいです!」
と、興奮状態のミケランさん。
…え、うらやましい? ミケランさんまで、何を言っているのかしら?
「そうだよね? 特別に、極上の魔力のおふとんをかけてあげたんだ!」
と、やたらと自慢げな、偽エルフ。
「極上…?! 私もかけてもらいたいです…」
ミケランさんの切なげな声。
この2人の会話は、一体、何…?
というか、魔術院の未来は大丈夫なの…?
なんだか、心配になるわね…。
「じゃあ、ルシェ。ぼくが、しっかりお手伝いするからね!」
「いえ、ここまでしていければ、あとは私一人で十分ですから…。そこらへんにでも座っててください。ノーラン様…」
色々考えるのが面倒になって、雑に答える私。
「もー、ルシェったら、遠慮深いんだから! よーし、ルシェのため、ぼく、はりきっちゃうおうっと!」
え、はりきる? それは、やめて…。嫌な予感しかないもの…。
うん、とりあえず、無視しよう…。
今は、目の前の魔石に集中よ!
私は、しっかりと結界の魔石に焦点をあわし、両手から守護の力をだしはじめた。
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