許せない!
よろしくお願いします!
変な空気を変えるために、まずは、私の頭をなでているノーラン様の手をはらいのけた。
そして、ルビーさんに向かって、しゃきんとした顔をみせる。
先輩聖女として、ここは、きっちりと、私が説明しておきましょう!
「ルビーさんの言われたことは、全部あっています。ただ、つけたすことが一つ。実は、守護の力は、重さが無いんです。というか、重さがあったとしても消してしまい、無にします。だから、守護の力がこもると、重い魔石が軽くなるんです。魔力とは真逆です。魔力がこもっているものは重いです」
私の説明を、ルビーさんが真剣に聞いてくれている。
ほっ…。この調子で、聖女として、ちゃんとしているところを見せなきゃ!
「今から、結界の魔石に守護の力をこめるのですが、もともと魔力を持っている結界の魔石は暴れます。やはり、真逆の力をこめられるのを嫌がるんです。なので、いつもは、ミケランさんが、魔石をおさえてくれています。やはり、魔力を持った魔術師さんでないと、暴れる魔石はおさえられません。だいたい、半分くらいまで守護の力がこもると、もう、魔石は動かなくなります。ということで、ノーラン様。ちゃーんとおさえておいてくださいね。…っていうか、今度こそ、手袋をしたほうがいいですよ」
「あ、いい。手袋、いらなーい」
間延びした、のんきな声。
「は? いやいや、いるでしょ? この結界の魔石、結構暴れるよ? 棘が刺さるよ?」
つい、素になってしゃべってしまう。
「知ってる。毎回、ミケランの作業を見てるし。でもね、ぼくなら、触らなくても、魔石くんをおとなしくできるもん! だから、ルシェ、心配しないで」
なに、それ? なら、毎回、ミケランさんにやらさず、自分でやってよ!
と、心の中で叫ぶ。
というのも、毎回、ミケランさんは、憎々しいほど大暴れする魔石を、必死でおさえていてくれるのよね。
私が全力で守護の力を注いで、魔石の半分ほどに守護の力をこめるまで、だいたい5分。
その間、ミケランさんは、汗を流しながら、魔石をおさえこんでくれている。
で、この偽エルフは、だいたい、その間、のんきに一人で雑談をしている。
はーっ、許せない!
「ミケランさんは、あんなに苦労して魔石をおさえてるのに! ミケランさん、ノーラン様に怒っていいですよ!」
思わず、心の声がでてしまう。
すると、ミケランさんは、ぶるぶると首を横にふった。
「とんでもないです! 私が力不足なだけなんです。触らなくてもいいなんて、さすが、ノーラン様! 今日は、勉強させていただきます!」
「うん、しっかり見ててね、ミケラン。ほら、ルシェも、そんなにプンプンしてると、守護の力が出づらくなるよ。…あ、でも、そうなったら、ぼくとルシェの一緒にお仕事する時間が、どんどんのびるねー! それはそれで、楽しそう!」
無邪気に言うノーラン様。
うん、それは嫌…。よし、最速で終わらせよう。
私は大きく深呼吸した。
目を閉じて、イライラをおさえて無になる。無になる。無になる…。
目をあけて、偽エルフを見た。心はおだやかなまま…。
よし、準備は整ったわ。
さあ、始めましょう。
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