やっぱり、いい
よろしくお願いします!
ルビーさんが、ノーラン様をきっとにらんだ。
「魔術師長様が何をおっしゃっているのか、私には全くわかりません」
あ、ルビーさんのその目! 懐かしい!
聖女の試験で初めてルビーさんを見た日。私をにらんだ目と同じだわ!
燃えるように赤く美しい瞳から、あふれでる気の強さ。
やっぱり、いいわね!
それに偽エルフに魅了される人達は山ほどいるけれど、にらみつける人はいない。
そう、王太子様をのぞいて…。
なので、そこも、いい!
だって、王太子様と思考が似ているってことだもの。
それに、偽エルフに簡単にまどわされるようではダメだから。
あの腹黒王太子様の伴侶となるのだものね。
フフフ…人選に間違いなし! 思わず、笑みがこぼれる私。
逆に、ノーラン様とルビーさんの間には、ぴりぴりとした空気が流れている。
「ふーん、ごまかすんだ? まあ、どうでもいいけど。でも、ルシェのことだけは、覚えといてねー」
嘘くさいほど、にこやかな笑顔をルビーさんにむけるノーラン様。
私のこと…? あ、私をいじめていいのは、ノーラン様だけっていうあのくだりかしら?
というか、誰も、私をいじめないでください!
ほんと、いつもながら、ノーラン様の言動は理解できないのよね。
ということで、気にせず、お仕事にとりかかろう!
「では、ミケランさん、はじめましょう。結界の魔石をここへお願いします」
そう言って、テーブルを手で示す。
ノーラン様とルビーさんの異様な雰囲気にのまれていたミケランさんが、はっとしたように言った。
「あ、…は、はいっ! ルシェル様、ただいま用意しますっ!」
「アリシアさんと、ルビーさんは、そちらの椅子にすわって見学を。で、ノーラン様は、あちらの椅子に座ってください」
そう言って、部屋のはしとはしに用意した椅子を指し示す。
狭い部屋だけれど、できるだけ、ノーラン様とルビーさんの椅子を離しておいてよかった!
やっぱり、ノーラン様の行動はよめないものね。
まあ、今日は初対面だし、ルビーさんには、ノーラン様に、徐々に慣れていってもらえばいい。
2人は婚約するわけではないし、仕事に支障がなければオッケーだから、ゆっくりでも大丈夫よね。
なーんて、想像をめぐらせていたら、ノーラン様が近づいてきた。
そして、にっこり微笑んで、私の隣に寄りそうように立つ。
「えっと…、ノーラン様? 一体、何をしているのですか? あちらに椅子を用意していますよ?」
と、壁際を指で差す私。
「うーん、今日は、ぼくもルシェのお手伝いをしようと思って。だから、ミケランが、あそこに座りなよ」
え? なんで、急に…?
いつも雑談しながら、椅子にすわって、だらだらしていますよね、ノーラン様?
そもそも、ここへ来ても、仕事なんてしたことがないですよね、ノーラン様?
何か面倒なことがおこりそうな、嫌な予感しかしない…。
なので、ノーラン様。お手伝いは結構ですので、大人しく、あちらに、座っていてもらえますか…?
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