混乱
不定期な更新ですみません!
魔獣関連にまきこまれる身としては、この点は、うやむやにはできないわ!
魔獣に携わる者はみんなが知っている注意事項なのに、何故か、問題を起こす張本人がまるで気にしていない。
ということで、みんなの気持ちを背負って、改めて、張本人のノーラン様にびしっと忠告をしておく。
「ノーラン様は圧倒的な魔力を持っていますよね。そんなノーラン様を見ると、魔獣は無条件で服従します。そして、自分たちの主と決め、離れなくなります。私の守護でくるんで眠らせて、魔獣の森へ送り返したのに、まいもどってきて、結局、魔術院に住み着いてしまった魔獣が三匹。しかも、ノーラン様にしか従わない面倒な魔獣たちです。そんな魔獣がこれ以上増えるのは、魔術院の方々にとって大迷惑! よって、ノーラン様が魔獣に姿を見せるのは絶対に禁止です!」
と、息まく私。
それにたいして、ノーラン様は、気の抜けた声で返事をした。
「えー、そうかなー? ラーもリーもローも、いい子たちだよ! 三匹とも、だいたいぼくの部屋にいるし。いっつも、大人しくしてるよ? あんな子たちなら、何匹増えても、みんな困らないと思うけど? だーれも文句言わないし」
「言わないんじゃなくて、言えないんです! それに、大人しい? 魔獣たちは主と決めたノーラン様にしか従わないし、ノーラン様が留守の時は、傍若無人にふるまっているって聞いてますよ?!…っていうか、ラー、リー、ロー? ちなみに、それは、魔獣の名前なのですか…?」
大事なところよりも、そこに、ひっかかってしまった私。
すると、ノーラン様が嬉しそうに、うなずいた。
「うん、ぼく、ラ行が好きなの! だから、ラー、リー、ローって名前をつけたんだよ。ぴったりでしょ?!」
「…いえ、まったく。というか、ラ行でいくなら、ラー、リーときたら、ローではなくて、ルーなのでは?」
「あ、それはダメ! ルーはルシェのルーだもん! そこは魔獣には譲れない。だから、ラー、リー、ルシェ、ロー!」
ええと、なに、その並び…?
私の名が、なぜ、魔獣の間にはさまれるの…?
他人から見たら、あの三匹は、凶悪な見た目の魔獣たちだけれど、ノーラン様にとってはペット。
つまり、ノーラン様にとって私は魔獣と同様のペットということなのね…?
はああー。ノーラン様の思考は、全くわからないわ…。
もう、この話題は変えようと思いつつ、怖いもの見たさのような好奇心が、ふつふつとわいてくる。
ということで、理解不能なことを聞くのは不毛だと思いつつも、更に質問を重ねてしまう私。
「じゃあ、ルーをとばすとしても、ローの前にレーがあるのでは?」
私の質問に、ノーラン様が美しい顔をゆがめた。
「あー、それダメ! 絶対ダメ! だって、レーは、あいつを思い出すから嫌! ぼく、ラ行の中で一番きらいなのがレだから!」
…ああ、なるほど。
あいつ、というのは、レオナルド王太子様のレということね…。
お互いの呼び方まで一緒だなんて、反発しあうのに、似ている二人よね。
と、そこで、「ひっ」とミケランさんが声をあげた。
「私の名は、ミケラン・レスター…。苗字が、ノーラン様のお嫌いなレから始まっている! どうしよう…。あ、でも、ミケランの中にはノーラン様のお好きなラが入っている。…つまり、プラスマイナスゼロってことになるのか…?」
泣きそうな顔でつぶやくミケランさん。
私の変な質問のせいで、ミケランさんが、混乱に陥ってしまっている!
私はあわてて、なだめた。
「大丈夫よ、ミケランさん! ノーラン様にとって、王太子様は特別なライバルだから、王太子様のお名前であるレを意識しているだけだと思うの。だから、他の人のお名前がレから始まっていようと気にもしないと思うわ。つまり、たとえ、ミケランさんが、レケランさんでも、ノーラン様からの好感度は変わらない! 気にしないで! ね?」
自分で言いながら、意味がわからない…。私は何を言っているのかしら…?
すると、ノーラン様がパチパチパチと手をうった。
「さすがー、ルシェー! ぼくより、ぼくのことをわかってるね! …確かに、ぼく、ルシェが、たとえレシェでも全然嫌じゃない! そのレは喜んで呼べると思う。でも、あいつがレオナルドじゃなくて、ラオノルドとか、ルオノルド…うん、どれになったとしても呼びたくない! そっか、ぼく、レの文字が嫌いってわけじゃなかったんだ。気づかなかったー! 教えてくれてありがと、ルシェ」
そう言って、花がほころぶように微笑んだノーラン様。
「はー、それは良かったですね…」
疲れのあまり棒読みで返事をした私。
やっぱり、変なことを聞くんじゃなかったわ。
何もすっきりしないし、疲れが増しただけだもの。
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