成長していない
今日、2回目の更新です。
「ノーラン様! これは、ミケランさんからいただいたお菓子です。わかりましたね?!」
私は、きりっとした顔で、厳しく注意しておく。
不敬であろうが、自由気ままな偽エルフに、これだけは言っておかねば。
素敵すぎるお菓子を買ってきてくださったミケランさんに失礼だもの!
「なんか、今日のルシェ、こわーい! あ、疲れてるの? だって、昨日、魔獣の対応にかりだされてたんでしょ? ルシェが行くなら、ぼくも呼んでほしかったのに。魔術院のみんな、だれもぼくに言わないんだよ? ぼく、かわいそー」
「はあ…? あたりまえです! …というか、ノーラン様が魔獣対応に行くことは止められてますよね?」
「えええ? それ、まだ続いてるの? ルシェの勘違いじゃない? ねえ、ぼく、もう、魔獣をやっつけに行ってもいいよね? ぼくが行ったら、あっという間に終わるよ? ねえ、ミケラン、行ってもいいよね?」
と、ミケランさんの顔をのぞきこむノーラン様。
…というか、ひっつきすぎじゃない?! 顔と顔がぶつかりそうだもの!
偽エルフは人との距離感もおかしいのかしら?
ものすごい至近距離で見つめられ、真っ赤になるミケランさん。
かわいそうなくらい、体がカチンコチンに固まっている。
それなのに、最後の力をふりしぼって、首を横にふった。
偽エルフの魅了に抗って、えらいわ、ミケランさん!
「それだけは、ご勘弁ください! ノーラン様が魔獣に向かわれる時は、筆頭聖女ルシェル様の守護の力でさえ対応できない場合のみ。つまり、国の非常時のみです!」
ミケランさんが、泣きそうな顔で、ノーラン様に訴える。
「えええ? なんで?」
はい?! どの口がきいてますか?! もしや、都合のいい記憶喪失ですか?!
いつもは温厚な私も、魔獣で迷惑をかけられた記憶がよみがえってきて、いらっとした。
私は、思いっきりノーラン様の服をひっぱって、瀕死のミケランさんから引き離した。
「ノーラン様が魔獣対応に行くのが、何故ダメかというと、ひたすら面倒なことになるからです! 今、魔術院に面倒な魔獣が三匹いますよね? あれ、魔獣の森に帰らないんですよ。何故でしょうか? はい、ノーラン様、答えて!」
「ええと、帰りたくないから?」
「はい、正解。では、何故、魔獣たちは帰りたくないんでしょうか? はい、ノーラン様、答えて!」
「ええと、ぼくと一緒にいたいから?」
「はい、正解。では、何故、ノーラン様と一緒にいたいんでしょうか? はい、ノーラン様、答えて!」
「ぼくが魅力的だから」
「ブー、不正解。やりなおし!」
「ぼくがかわいいから」
「ブブブー! 不正解! ふざけてますよね?」
「だって、ルシェがムキになって、おもしろいもーん! おこってるルシェもかわいいー!」
そう言うと、いきなり、私の頭をわしゃわしゃとなではじめるノーラン様。
力がどっとぬける。
そうだったわ…。小さい頃から、ノーラン様にからかわれて、ムキになっては、遊ばれるだけだったっけ…。
全く成長していないじゃない、私…。
はあーっと、大きなため息がでた。
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