誰から
不定期な更新ですみません!
すっかり、その時のことを思いだした私は、顔色が悪くなったミケランさんに声をかけた。
「あれは、泣きまねをしたノーラン様が悪いんです! 純粋なミケランさんは、だまされただけです。何も悪くないです。気にしないで」
「えー、ぼくが悪いの?! あんなんで、だまされるほうがダメじゃない?」
なんて、ぶーぶー言うノーラン様をにらんでだまらせる。
ミケランさんが、私にむかって、おもいっきり頭をさげた。
「お優しいルシェル様に、ひどいことを言ってしまい、申し訳ありませんでした! これからは、ルシェル様の手足となれるようにがんばります!」
え…、手足? ミケランさん、それはいりませんが…?
驚く私にかわって、ノーラン様がすぐさま返事をした。
「そんなもの、断固お断り! ルシェに変な手足はいらないの! ルシェに手足がいるなら、ぼくがつける!」
は? どんどん、話しの展開がおかしな方向に向かってるわよね?
そして、私の手足は間に合ってます…。
ということで、私の手足から話題を変えるべく、ミケランさんが、私に差し出してくれた花柄の箱を手にとった。
「ええと、おわびを受け取る理由もないのだけれど…、では、遠慮なくいただきますね! ミケランさん、あけてもいいかしら?」
「はいっ、どうぞ!」
嬉しそうに答えたミケランさんの顔色が良くなってきたわ。ほっ…。
ということで、早速、花柄の箱のふたをあけた。
箱の中には、びっしりと並んだ焼き菓子。
しかも、全部、お花の形をしている!
「うわあ、すごいわ! かわいいっ! おいしそうっ!」
思わず、大きな声をあげてしまった私。
一気に心の疲れがふきとんだ。
「これ、本当にもらっていいの?! ミケランさんっ!」
あまりに嬉しくて、口調もくずれてしまうが、しょうがない。
こんなに素敵な沢山のお菓子を目の前にして、普通ではいれないものね!
「ええ、もちろんです! ノーラン様に、ルシェル様が菓子がお好きだとお聞きしたので、今、街で人気があるという店で買ってみました。そんなに喜んでいただけて、私も嬉しいです」
「え、わざわざ、私のために?! うれしいです! では、全部私が…ではなくて、みんなでいただきます! ありがとうございます! もう、最高の気分です!」
私は、お菓子の箱をしっかりとだきしめ、感謝の言葉をのべる。
すると、何故か、ノーラン様が私の顔をのぞきこんできて、満面の笑みで言った。
「どういたしまして!」
「…ん? いえ、私は、ミケランさんにお礼を言ってるんです。ノーラン様にじゃありませんよ?」
そこは、はっきりと否定しておく。
「でも、ぼくが、ルシェはお菓子が好きってミケランに教えたんだよ。もし、ルシェはリュリュが好きって言ったら、その箱いっぱいにリュリュが入ってたんだよ? だったら、どう?」
だったら、どうって…、そんなの入ってたら、確実に泣くわ…。
リュリュは、私が一番苦手な野菜。
かわいい響きの名前に、小さくてやわらかい葉っぱは、きれいな黄緑色をしている。
ソフトな印象の野菜なのに、その味は、パンチが効きすぎている。恐ろしく苦いのよね…。
それなのに、すごく栄養があるとかで、エリカ様が野菜ジュースに好んで使う。
協調性が全くなく、クセの強いリュリュが野菜ジュースに入ると、全てがリュリュ味になってしまうのよね…。
そう、私の天敵ともいえる野菜だ。
リュリュを箱いっぱい贈られるなんて、想像しただけで怖すぎる…。
「ぼくが、ミケランに、ルシェはお菓子が好きってきちんと伝えたから、ミケランは人気店で2時間並んで買ってきたの。だから、ルシェはリュリュじゃなくて、その美味しいお菓子を手にしてるの。だから、そのお菓子は、ぼくがプレゼントしたってことでいいよね?」
「いや、全然よくないわよ、ノーラン! これは、ミケランさんが買ってくれたんだもの! しかも、2時間も並んで?! なんてすばらしい方なのかしら! その努力をノーランが横取りしちゃダメ!」
昔の口調に戻って注意する私。
ありがたいお菓子をくれた方に、無礼は許しません!
きりりとにらむ私を見て、何故か、とろけるように微笑んできた偽エルフ。
「うわあ、また、ノーランって呼んでくれたー! うれしいな♪」
うれしいな、じゃないわ!!
いきどおる私に、ミケランさんが優しい声で言った。
「いえ、ノーラン様のおっしゃる通りです。ノーラン様に教えていただいたおかげで、お菓子を買うことができました。つまり、そのお菓子はノーラン様からです」
それは全然違うわ、ミケランさん…。
偽エルフにまるめこまれたらダメよ!
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