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「俺は、ルシェルの専属護衛騎士しかやらない!」
ノアが、猛抗議しているが、決定権はロジャー様にある。
ロジャー様は、大聖女エリカ様のご主人で、専属護衛騎士というだけでなく、聖女の護衛の責任者であり、なおかつ、神殿の全ての決定を国王より任されている。
というのも、王弟殿下だから。
実は、大聖女のエリカ様は異世界からの渡り人。
しかも、なんと、100年ぶりの渡り人で、この国にきて早々に、ド派手な浄化をしたため、大騒ぎになった。
すぐに、王室が保護に動いた。エリカ様を王妃にと声があがったけれど、国王にはすでに王妃がいる。
では、側妃にと話がでた。
「はあ、側妃?! 冗談じゃない! お断りよっ!」
そうエリカ様は啖呵を切ると、国王をぴしりと指さした。
「もしも、王妃と別れるから、王妃になって、…なーんて、言おうもんなら、そんな国王のいる国、即刻、でていくわ!」
と、言い放ったエリカ様。
愛する王妃がいるけれども、国のため、涙をのんで、国王はそう言おうとした矢先だったから、言い当てられて震えていたそう。
何故、それを私が知っているかというと、ロジャー様に聞いたから。
その怒れるエリカ様に、一瞬にして心をつかまれたロジャー様。
王弟殿下であり、騎士団長であったロジャー様は、その場でエリカ様に剣をささげられたそう。
そして、王宮から神殿に移り住み、エリカ様の専属護衛騎士になった。
というくだりを、何百回と聞かされてきた私…。
どれだけ、エリカ様がかっこよかったかと、まるで昨日、起きたことのように、頬をそめて語るロジャー様。
エリカ様の話をすると、精悍なお顔が、まるで乙女のようになるロジャー様。
そんなロジャー様だけれど、決定は絶対だ。
むくれるノアを前に、エリカ様が私に聞いてきた。
「ねえ、ルシェル。あなたの専属護衛騎士がノアからジャックに変わるのは嫌?」
そのとたん、ノアの鋭い目が私を見る。
嫌だと言え!という圧がすごい…。
「まあ、確かに寂しいよね…」
ノアは一緒にいて楽だし、お菓子がもらえるし…。
「そうだろ! やっぱり、ルシェルには、俺がいないとな」
ノアが、自慢げにエリカ様を見る。
だけど…待って?! これって、いいことなんじゃない?
だって、私は、筆頭聖女の役目をルビーさんに譲るという目標…いえ、使命がある!
そのルビーさんの専属護衛騎士にノアがなるってことよね?
つまり、筆頭聖女の専属護衛騎士を先に譲るってことでいいのかしら!?
性格は癖が強いノアだけれど、ものすごく強い。護衛騎士としては、最高に信頼できる。
6歳から一緒にいる私には、それが身に染みてわかる。
私は筆頭聖女になって、ノアのおかげで、危ない目にあったことは一度もないものね。
つまり、ルビーさんに筆頭聖女になるべく打ち込んでもらうためには、ノアがそばにいて守ってくれると、安心だわ。一日でも早く、もろもろ引き継いでもらいたいし!
しかも、明日、ルビーさんが来る時にこんなお話がでるなんて、やっぱり、ルビーさんは、筆頭聖女になる運命なのね! フフフ…。
ノアからお菓子がもらえなくなるのは、本当に寂しいけれど、私、我慢します!
だって、筆頭聖女の役目を無事引き継げば、お菓子が食べ放題だもの! フフフ…。
ということで、私は、はりきって宣言した。
「ジャックが私の専属護衛騎士になることに、異存ありません! ノアには、慣れないルビーさんをしっかり守ってもらいたいわ…フフフ」
「ああ?! おい、こら、ルシェル! なに、にやついてる? 一体、どういうつもりだ?!」
ノアの口調がすっかり荒れている。
「じゃあ、決まりね。ロジャー。ジャックにも伝えといてね」
と、エリカ様が上機嫌で、ロジャー様に言った。
「もちろんだよ、エリカ。的確な指示をありがとう」
ロジャー様が、うっとりとエリカ様をみつめる。
いらだった顔で私を見るノア。
ノア、ごめんね。でも、わかって!
大きな目標のためには、まずは、身を切らないといけないの…。
そして、ルビーさん!
私の心の準備、整いました。明日、お待ちしてますね!
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