結構です
不定期な更新ですみません!
魔術院から届けられた結界の魔石に守護の力をこめるのは、専用の部屋で行っている。
そこには、テーブルと椅子以外、ほとんど物がない。
窓はなく、壁が厚く、できるだけ外の音が聞こえないつくり。
集中して、守護の力をいれるためにと作られた部屋。
あとから、アリシアさんが、ルビーさんを連れて見学にきてくれるので、アリシアさんとルビーさんが座れる椅子を用意しておく。ノーラン様がいつも座る椅子から、できるだけ離しておかないとね。
だって、いきなり、あのノーラン様に至近距離はきついと思うから…。
徐々に慣れていってほしいものだわ。
椅子の配置が終わった時、神官見習いのアランに案内されて、ノーラン様とミケランさんがやってきた。
「ルシェー、おはよう! それと、アラン君。案内ありがとうね」
そう言って、ノーラン様が、アランに向けてふわりと微笑んだ。
神秘的な美しさに、一気に甘さが含まれる。無駄に甘いわ…。
たちまち、アランが耳まで真っ赤になり、すごい勢いで頭を下げると、逃げるように去っていった。
まあ、見慣れていない人には刺激が強いわよね…。
銀色の髪はつやっつやで、緑色の瞳はきらっきら。
エルフらしさ満載の美しさ。
見慣れている私ですら、まぶしすぎて、やっと開いた目が、またつぶれそうだもの。
「おはようございます、ノーラン様。ミケランさん」
私が疲れた声で挨拶をすると、ミケランさんが深々と頭をさげて、丁寧な挨拶をしてくれた。
「おはようございます、筆頭聖女ルシェル様。今日もよろしくお願いいたします。あの…それと、これ…どうぞ」
ミケランさんが、恥じらうように、かわいらしい花柄の箱をさしだしてきた。
「うわ、すごくかわいい! 魔石を入れている木箱を新しくされたのですか?! すごーく素敵ですね」
私の言葉に目を見開いて、驚いたような顔をしたミケランさん。
あら、どうしたのかしら?
すると、ノーラン様がぷっとふきだした。
「もう、ルシェって、ほんと、おもしろーい! 結界の魔石をこんな花柄の箱にいれるわけないでしょ? しかも、これ、紙の箱だよ?!」
「え? 魔石じゃないの?! じゃあ、なにかしら?」
ミケランさんが、真っ赤な顔をして言った。
「先日、ルシェル様を侮辱するような言葉を言ってしまったので、お詫びの気持ちです! どうぞ、受け取ってください!」
侮辱…? やっと目覚めてきた頭は、まだ動きが悪く、何も思い出せない…。
「私、何を言われたんでしょうか…?」
すると、ミケランさんが、あわてたように言った。
「忘れてくださってるなら、ありがたいです! そのまま忘れてください!」
あ、そう? なら、簡単で良かった…。
私はミケランさんに、にっこり微笑んで言った。
「では、忘れるのは得意なので、ずっと忘れておきますね」
ミケランさんも安心したように、微笑み返してきた。
すると、いつの間にか私の隣にきていたノーラン様が楽しそうに私の顔をのぞきこむ。
「もう、ルシェはわすれんぼうだねー。しょうがない。ぼくが思い出せてあげる!」
「勘弁してください、ノーラン様!」
ミケランさんが、小さく叫ぶ。
あ、ミケランさんがかわいそうな感じになってきたわ。
私はあわてて、ノーラン様に言った。
「私は思い出さなくて結構です! だから、だまっててくださいね、ノーラン様!」
だけど、やけに楽しそうに微笑むノーラン様は、私の言葉などまるで聞いていない様子。
「ええと、ミケランがルシェに言ったのは、確か、『ノーラン様を泣かせるなんて、聖女様なのに、悪女ではないですか!』…だっけ?」
そう言って、小首をかしげるノーラン様。
いやいや、だっけ?とか言いながら、しっかり再現してますよね?
だって、その言葉で、その時のことをはっきり思い出したもの。
その言葉の直後に、ミケランさんが吹き飛ばされたこともね。
そして、ミケランさん、大丈夫…?
顔色が気の毒なことになってますよ…。
読んでくださった方、ありがとうございます!
ブックマーク、評価、いいねもありがとうございます! 大変、励みになります!