ごめんなさい!
よろしくお願いします!
まるで、懐かない野生動物のようなルビーさん。できるだけ早く、私という存在を知って慣れて欲しい。
そのためには、今日からルビーさんの視界に入りまくるわ、と気合十分な私。
なのに、運悪く、魔獣がでたと知らせが入り、エリカ様と私が現地に行くことになった。
もちろん、ロジャー様と私の護衛騎士になったジャックも行く。
神殿からは、この4人。
他には、魔獣対策の訓練を受けた王宮の騎士と魔術師も現地で合流する。
エリカ様が、アリシアさんに言った。
「アリシア、今日は、あなたの仕事をルビーに見学させておいて。何時に帰れるかわからないから、あとはよろしくね」
「はい、わかりました。エリカ様」
アリシアさんが、力強くうなずく。
「魔獣がでたのなら、俺にルシェルの護衛をさせてください! ルシェルにつくのが今日初めてのジャックは、魔獣に慣れていない!」
ノアがエリカ様に懇願するように言う。
それは確かにそうね…。
魔獣がでたと神殿に連絡があった場合、ほとんど私が行く。
何故か、私の守護の力で魔獣をくるむと、眠らせることができるから。
つまり、神殿の中で、魔獣担当と言えば私。そのため、私の専属護衛騎士だったノアも魔獣には慣れている。
が、アリシアさんの護衛騎士だったジャックは、慣れるほど魔獣と対峙する機会はなかったと思う。
ノアは、同期のジャックが心配なんだね。
私はノアにむかって、ドンと胸をたたいて見せた。
「ノア、ジャックのことは私にまかせて! 大丈夫。いつものように、魔獣をころっと眠らせるわ。だから、安心して」
そう言って、ノアを安心させるように、にっこりほほえんでみた。
その瞬間、変な静けさにつつまれる
あれ? みんな、どうしたのかしら?
ノアはすごい勢いで私をにらみつけ、エリカ様はため息をつき、ロジャー様はあきれたように私を見て、アリシアさんは困ったように笑い、ルビーさんは、少し驚いたように目を見開いて私を見ている。
そして、何故か、少しショックをうけたような顔をしているジャック。
どうやら、私、変なことを言ったようね…。
静けさをやぶったのは、ノア。
地を這うような声で私に言った。
「俺はジャックのことなど、微塵も心配してはいない。ジャックは護衛騎士だ。そのジャックをルシェルが守ろうとしてどうする? 護衛騎士にとったら、屈辱的だぞ。俺は、慣れない護衛で、ルシェルの守りに隙ができるのが嫌なだけだ」
…え、屈辱的?! …あ、そうね…。私ったら、なんてジャックに失礼なことを言ったのかしら…。
「ジャック、ごめんなさい! ジャックのことは騎士としてすごく信頼してる! でも、魔獣に関しては私のほうが慣れてるから、つい先輩風を吹かせてしまいました。えらそうでした! ごめんなさい!」
私はあわてて、ジャックに頭をさげる。
すると、ジャックはぷっと笑った。
「先輩風って、なんだそれ…? でも、ルシェル。俺のほうこそ、すまなかった。ノアに指摘される前に俺が言うべきだった。今の俺は、魔獣に立ち向かう筆頭聖女様を完璧に守れるとは言えない。俺は魔獣には慣れていない」
ジャックはそう言うと、ロジャー様に向かって頭をさげた。
「ロジャー様、今後のためにも、ノアに指導をあおぎたいです。魔獣のいる現場にノアも同行してもらっていいですか?」
ロジャー様は、すぐさま、うなずいた。
「ノア、今日は筆頭聖女の護衛として同行しろ。ジャックと一緒にルシェルを守れ。ジャック、ノアの行動から学べ。そして、デレック。今日はアリシアとルビーを一緒に行動させて、二人とも護衛してくれ。補助として神殿の護衛騎士2人をまわす。そして、エリカは俺が全身全霊で守る。以上!」
そう言い終わると、エリカ様にとろけるような笑みをむけたロジャー様。
いつもどおり、エリカ様命のロジャー様の締めの言葉を合図に、皆がいっせいに動き出した。
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