ご挨拶
不定期な更新ですみません!
「じゃあ、ルシェル。今日は楽しかったです。また、すぐ会いましょう。それと、明日、あいつのことは見ないように。しゃべらないように。…それでは、みなさん、ルシェルをよろしくお願いしますね」
王太子様は、美しい笑みをうかべて、そう言うと、アルバートさんと共に颯爽と帰っていった。
いつもより、滞在時間が長かっただけに、どっと疲れが押し寄せる。
それに、最後の言葉、あれは、なんなの?
あいつって、ノーラン様のことでしょうけれど、見ない、しゃべらないなんて絶対に無理よね。
万が一、そんなことをしようとしたら、私なんて、一瞬で滅ぼされるんじゃない?
それに、みんなに、私をよろしくお願いしますって、今まで言ったことなかったのに…。
やっぱり、自分のペットを預けているような感じなのかしら…?
なんてことを考えていたら、目の前にいるルビーさんの視線を感じた。
あっ、しまった…! まだ、直接、ご挨拶をしてなかったわ!
私は、あわてて、ルビーさんにむかって、ご挨拶をする。
「はじめまして、ルビーさん! 私はルシェル・ボリスです。ルビーさんが来てくれて、嬉しいです。これから、よろしくお願いします!」
待ち望んでいたルビーさんを目の前にして、思わず顔がにやけてしまう。
だって、私が神殿に入ってから、新しく入ってくる聖女はルビーさんが初めてだもの。
引継ぎをお願いするという願望は別にしても、早く仲良くなりたい!
ドキドキしながら、ルビーさんのきれいな赤い瞳を見つめる。
「ルビー・ロランです。筆頭聖女様、これからお世話になります。よろしくお願いします」
ルビーさんが挨拶を返してくれた。
でも、あれ…?
ルビーさんの私を見る視線はやけに強い。というか、強すぎて痛い…。
そして、口調は、やけにひんやりしている…。
さっき王太子様と話していた時よりも声の高さも温度も更に低くなり、もはや氷点下になった感じよね…。
あ、もしかして、緊張しているのかも!
うん、きっとそうね。
私は、ルビーさんの緊張をときほぐそうと、ことさら、にこにこしながら話しかけた。
「あの、ルビーさん。神殿内では、みんな、ルシェルと名前で呼びますので、ルビーさんも、そう呼んでくださいね」
「いえ、そうはいきません。筆頭聖女様と呼ばせていただきます」
と、淡々とした口調で答えるルビーさん。
「本当に、ルビーさんは、すごくしっかりしてるわね! 14歳とは思えないわ。でも、ルビーさん。聖女の仕事は色々大変だし、気力を使うから、仕事以外は気楽にね。私はもうすぐ辞めてしまうけれど、ルビーさんとルシェルは年も近いし、仲良く過ごせると思うわ」
と、そばに立っていたアリシアさんが、穏やかにルビーさんに語りかけた。
すると、ルビーさんが微笑んだ。
きれい!! …でもでも、なんて、冷たい微笑なの?!
空気が寒すぎて、思わず震えてしまう私とアリシアさん…。
「いえ、私は、仲良くするつもりはありません。もちろん、聖女の仕事は全力でしますから、ご安心ください」
うん、断固拒否ね…。
ルビーさんが、毛を逆立てている野生動物に見えるわ…。
どうやら、すごーく警戒されているみたい。
もしかして、さっき、王太子様が私について変な注意事項を言ったせい?
近寄っちゃいけない、要注意人物みたいに思われたのかも…。
つまり、ルビーさんからの私の好感度は、マイナスからのスタートってことね。
うん、すごーく、やる気がでてきた!
それに、聖女の仕事に関しては不安がまるでないみたい。なんて、頼もしいの!
あの王太子様と渡り合うには、この気の強さは武器になるわよね…フフフ。
まずは、早く仲良くなれるよう、がんばりましょう!
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