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王太子様が、皆を魅了する王太子様スマイルをうかべ、ルビーさんに声をかけた。
「あなたが新しい聖女の方ですね」
「はい。ルビー・ロランと申します。よろしくお願いいたします」
と、ルビーさん。
凛とした声で、しゃきっと話すルビーさん。
しかも、赤い瞳は、臆することなく、まっすぐに王太子様を見ている。
すごいわ!
私より2歳も年下なのに、なんて、しっかりしているのかしら!
だいたい王太子様を初めて見た人は、あまりの美しさに頬を染めたり、動揺したりするものなのに…。
小心者の私とは違って、肝が据わっているわ。
やはり、色々恐ろしい王太子様には、ルビーさんがぴったりね!
王太子様は、美しい笑みをうかべたまま、次の言葉を発する。
「聖女の仕事は大変でしょうが、国のために励んでください」
「はい。全力で努力いたします」
王太子様を強い視線で見据えたまま答えるルビーさん。
王太子様の紫色の瞳とルビーさんの赤い瞳が見つめ合う。
どちらも宝石みたいで、本当に美しいわ。
でも、想像していた感じとは全然違うわね…。
何が違うのかしら? …って、あ、温度だわ!
ひんやりとした宝石同士が対峙しているようで、そこに熱を感じないのよね。
でも、まだ挨拶したばかりだもの。盛り上がってくるのは、今からよね…。フフフ!
私はお邪魔にならないように、息をひそめて、お二人を見守る。
すると、王太子様が、いきなり私のほうを向いた。
「ここにいる筆頭聖女のルシェルは、努力家で、すばらしい聖女です。見習ってくださいね」
そう言って、王太子様は、甘ったるく私に微笑みかけてきた。
「はい。わかりました」
と、ルビーさん。
王太子様、私のことはどうでもいいです! 私以外のことで、ルビーさんと会話をしてください!
「ルシェルは聖女としてはとても優秀なのに、ぬけているところもあります。そこも可愛らしいのですが、どうぞ、支えてあげてくださいね」
「はい、わかりました」
と、ルビーさん。
ちょっと、王太子様! 確かにぬけていますが、私のことはどうでもいいです!
それと、私じゃなくて、ルビーさんを見て! そして、話しをしてください!
アルバートさんが時計を見ながら、すごい圧でお二人を見ているわ。
時間がない!
焦る気持ちをこめて、目でルビーさんを指し示すと、王太子様は優雅にうなずき、ルビーさんへと向き直った。
良かった! 伝わったわね!
「そうそう、ここで働くために、一番大事なことを伝え忘れていました。万が一にも、ルシェルを害する者がいれば、それが誰であっても、…そう、神であっても、ぼくは許しません。ルシェルの近くで働くことの最も大切な注意事項として心に留めておいてくださいね」
「…わかりました」
ルビーさんの声が、急に小さくなった。
あのー、王太子様? 一体なんなのですか? その変な注意事項は!
神殿で働くためには、全く必要のない注意事項ですよね?!
しかも、神であっても許さないなんて、神殿で言うことかしら?
王太子様は、一体どういうつもりでそんなことを…?
…あっ、わかったわ!
王太子様もノーラン様同様、私をペットと認識しているのね。
だって、さっきの会話でも、すぐに言い直したものの、私にむかって「しつけ」が必要みたいなことを言ってたし!
自分のペットとして守ろうとしているのね!
なんて考えていたら、
「10秒どころか50秒たちました。強制終了です」
アルバートさんが、ものすごい早口で王太子様に声をかけた。
え、50秒?! いくらなんでも、短すぎるわ、アルバートさん!
そして、そこまで待ったのなら、せめて1分は待ってほしかったわ、アルバートさん!
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