ついに
よろしくお願いします!
王太子様の話を聞き終わったエリカ様が、顔をしかめて言った。
「つまり、気持ちが悪いほどレオの思いがつまった、恐ろしい石が、ルシェルを守ってるということね。気持ちが悪いけれど、ルシェルが安全ならいいわ。ルシェル、気持ちが悪くても、その指輪を外したらダメよ。気持ちが悪いけどね…」
エリカ様、気持ちが悪いを言いすぎですよ…。
「じゃあ、聞きたいことを聞いたから、私の浄化で、みんなの守護をとくわね」
エリカ様はそう言うと、両手をあげた。
まとう雰囲気が、一瞬にして変わる。
すぐさま両手の手のひらから、光があふれだした。
光に包まれたエリカ様の姿は、神秘的で美しい。大聖女様の威厳も感じる。
さっき、王太子様にパンチを入れていた人と同一人物にはとても思えないわよね…。
エリカ様の強力な浄化で、みんなを守護していた私の力が消えた。
まわりのざわめきが聞こえはじめる。
そして、ひと際、大きな声をあげているのは、ロジャー様だ。
エリカ様の名前を連呼しているが、声が大きすぎて、耳が痛い…。
「エリカ! 無事かっ?!」
叫びながら、エリカ様をがしっと抱きしめるロジャー様。
「ロジャー…。レオとルシェルと話してただけでしょ? 無事に決まってるわ」
と、エリカ様が、あきれた顔で言った。
「エリカ! そうはいっても、エリカが見えない、エリカの声が聞こえないんだぞ?! どれだけ心配したかっ!」
ロジャー様、いくらなんでも大げさです…。
エリカ様と離れていたのは、たった数分ですよ?
そして、表情は無のまま、王太子様にすごい早足で近づいてきたのは、従者のアルバートさん。
「王太子様、そろそろ、王宮へ戻りませんと」
と、これまたすごい早口で言う。
表情は無だけれど、かなり焦っているのかも…。
王太子様は、アルバートさんに軽くうなずくと、私を見た。
「ルシェルといると、時間がたつのが早すぎます。ずっと一緒にいられる日が待ち遠しいです」
そう言って、とろけるような笑みを浮かべる王太子様。
いえ、そんな日はきません。できるだけ早くルビーさんへ引き継ぎますからお待ちください。
…って、あ、ルビーさんはどこに?!
あわてて、まわりを見ると、アリシアさんの隣でこちらを見ている。
赤い瞳は、まさに、ルビーのように美しくきらめいているのだけれど、何故か、アルバートさんのように表情は無。
初日なのに、このへんでわちゃわちゃしているから、あきれてしまったのかしら?
それより、せっかく王太子様と会えたのに、お二人はまだ一言もしゃべっていないわ!
私はあわてて王太子様に言った。
「えっと、新人聖女のルビーさんがあちらにいます。せっかくなので、少しだけでもお話を…というか、ご挨拶させていただいてよろしいでしょうかっ?!」
気がせいて、声がうわずってしまった。
王太子様が、少し驚いたように目を見開いた。
「…へえ? 珍しいですね。ルシェルが、ぼくに頼みごとをするのは…。わかりました。ルシェルに頼まれたら、嫌とは言えません。簡単に挨拶しておきましょう」
「では、王太子様、10秒で」
と、アルバートさん。
え、たったの10秒?! 時間がないわ!
ああ、王太子様がエリカ様と話していた時間をルビーさんにあげたい!
と、こんなことを考えている場合ではないわ。
「では、こちらへ!」
王太子様にそう声をかけ、ルビーさんのもとへと、アルバートさん並みの早足で誘導する私。
そんな私を誘導するように、いつの間にか、私の前を歩いているノア。
ノア、何をしているの…?
まあ、でも、ノアのことは、今はどうでもいいわね。
そして、ルビーさんの前に王太子様が立った。
見つめ合うお二人!
ついについに、言葉をかわすのね。ドキドキ!
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