一刻も早く!
よろしくお願いします!
王太子様の発言に、エリカ様が眉をつりあげた。
「つまり、命にかかわる攻撃でないと守らない石ならば、そうそう動かないってことよね。じゃあ、もしかして、レオは石が守るところを一度も見たことがないの? 見ていないのに、石の力を信じてるの? 見ていないのに、ルシェルに持たせてるの? 見ていないのに、安全だと思い込んで、ルシェルの護衛騎士を遠ざけるの? 見ていないのに…」
「見ましたよ」
エリカ様の永遠に続くかと思われた、「見ていないのに…」攻撃が、王太子様の強い一言で止まった。
「子どもの頃、2度見ました。まずは、6歳の頃。信用していたメイドが実は刺客で、刺されそうになった時でしたね。刃が体に刺さりそうになった瞬間、刃がはじき飛ばされました。次は、8歳の頃。護衛たちのすきをぬって、毒矢が飛んできた時。体に刺さりそうになった瞬間、矢が折れました。それ以降は、ぼくも鍛えていますので、そうそう刺客に遅れはとりません。だから、石が動くこともないですけどね」
王太子様の言葉に、エリカ様が、驚いたように石を見る。
「え? なに、それ。その石、ちょっと怖いわね。…あれ? でも、前の大聖女ミリヤ様に聞いたけれど、レオのおじい様で前の国王様は、暗殺者に刺されて、重傷をおったんでしょ? 刃に強い呪いがかかっていたから、癒しが効きにくくて、治るのに時間がかかったって聞いたけど。その石を身につけていなかったのかしら?」
その話、初めて聞いたわ…。
前の大聖女ミリヤ様の癒しも効きにくかったなんて、すごい呪いよね…。
私は前の大聖女ミリヤ様が亡くなられた後に神殿に入ったので、お会いしたことはないけれど、癒しの力が特に強かったとお聞きしている。
王太子様は、エリカ様の問いに、なんでもないように軽く答えた。
「ああ、それは、ぼくが改良してありますからね。その時の石より、強力です」
「えっ? 石を改良?!」
驚いて、思わず声をあげた私。
すると、王太子様はエリカ様から私に視線を移した。
「ぼくの魔力は、物をあやつることができるって言いましたよね? 特に、破壊は得意なので、向かってきた武器は破壊するような魔力をこめてます。ちなみに、この石だけの力なら、先の国王のように、刺されても、せいぜい、致命的なところを外すくらいの守りしかない。つまり、死なないまでも大けがを負う可能性がある。そこをぼくの魔力で補強しました。ルシェルに渡している指輪の石は小さいけれど、特に強く魔力をこめてあります。破壊だけでなく、攻撃もできるような特別仕様ですから。ルシェルを狙う不届き者は逃がしません。だから、ルシェル。安心してくださいね」
そう言って、恐ろしいほどの美しい笑みをうかべた王太子様。
…え? いやいや、安心してと言われても、逆に怖いのですが…?!
身の安全よりも、敵の方がどんな目にあうかと思うと、恐ろしすぎる。
とにかく、今まで、一度も石が発動しなくて本当に良かった…。
常に傍で守ってくれた、ノアのおかげね。後で、しっかりお礼を言っとかなきゃ!
そして、更に私の気持ちは強くなったわ!
一刻も早く、筆頭聖女と婚約者の地位をゆずり、この恐ろしい指輪も王太子様にお返しなくてはね!
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