もともと?
よろしくお願いします!
エリカ様の強烈なパンチが、めりこんだ王太子様。
美しい顔に、うっすらと苦悶の表情をにじませている。
「痛いですよ、エリカさん…」
王太子様が、底冷えのする声を放った。
「あ、痛かった? ごめんねー。でも、レオが殴れって言ったから、忠実に守っただけだしね」
全く悪いと思っていない口調で、軽く謝るエリカ様。
エリカ様…。
確かに、王太子様はそう言われたけれど、力が強すぎるのでは…?
それに、ほら、見てください。
王太子様の痛みをこらえていると思われる眉間のしわ。
そして、極寒の目…。
ここは、とりあえず、気持ちをこめて謝ってください!
という私の願いも届かず、…それどころか、若干、不服そうな顔をして、王太子様がしゃべるのを待つエリカ様。
にらみあう二人。
この間…。色々怖いわね…。
そして、痛みがおさまったのか、眉間のしわがとれた王太子様。
凍りつきそうな視線で、エリカ様をにらみながら、やっと口を開いた。
「誰が、これほど、本気で殴れと言いましたか? 常識で考えたらわかるでしょう? あ、失礼…。エリカさんには常識がなかったのでしたね」
ひいっ! やはり、王太子様、やりかえそうとしていますよね?!
すると、エリカ様は鼻で笑った。
「常識? なくて結構!」
胸をはって、言い放ったエリカ様。いや、あの…、それはないと困るのでは…?
「それより、レオの言い方よ! 見せた方が早いって言ったから、てっきり、私が殴りかかったら、その石がレオを守るところが見られると思ったのに。だから、全力で殴ったのよ! そう言われたら、誰だってそう思うわよ! ね、ルシェル」
ええっ、私?! 急に私にふらないで!
そして、二人からの視線の圧がすごい…。
巻き込まないで!
と思いつつも、小心者の私は、仕方なく、適当に答えてみる。
「…ええと、どうでしょう? そう思うような…、思わないような…」
「心優しいルシェルなら、どう思ったとしても、エリカさんのような馬鹿力で殴ったりはしませんよ。…それに」
そこまで言って、王太子様がフッと微笑んだ。
え、何…? 怖い…。
だって、その美しい微笑みから、なにやら、色気のような妖しいものが、どばっとあふれ出しているんだもの…。
反射的に後ろへ下がろうとしたら、にぎられたままの手をぐいっとひっぱられ、逆に近づいてしまった。
「ぼくは、ルシェルに殴ってもらえるのなら、いつでも、どんな強さでも、何度でも大歓迎ですよ。ルシェルからもらえるものは、なんでも欲しいですから」
…え? えええ?!
王太子様、一体、何を言っているのですか?!
それ、すごーく変です! 変すぎます! そして、危ない人です!
あっ!
もしや、エリカ様に、強く殴られて、変な影響がでてしまっているとか?!
いや、でも、殴られたのは頭じゃないし…。
ということは、もともと…?
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