違いますから!
よろしくお願いします!
エリカ様が、飛びかからんばかりのロジャー様に片腕をのばして制した。
そして、王太子様に、ぎらぎらした好奇心いっぱいの視線を向ける。
「ねえ、レオ! 話しがそれてるわ! ノーランのことも、あなたの魔力のことも、この際、どうでもいい! それより、ルシェルの指輪にいれた石のことよ! レオの魔力で、割れない石が割れて、ルシェルの指輪にいれたこともわかった。で、結局、その石を身につけていると、どうなるの?! 嘘偽りなく、ぜーんぶ、話しなさい!」
「話をそらしまくっているのは、エリカさんでしょう? それと、もちろん、石は身につけている者を守ります。そうでないと、つける意味がないですから」
王太子様が、淡々と答えた。
「だから、そうじゃなくって、石が、持ち主をどうやって守るかが聞きたいの! どうせ、すごい秘密があるのよね? だって、秘宝よ! 秘宝! そんなもの、見たことがないわ! まさに、異世界よね! わくわくするわあ!」
とても興奮している様子のエリカ様。
「エリカさん。秘された宝であるからこそ、秘宝と言われます。つまり、人に見せず、隠されているのが普通です。見る機会がないのは当然でしょう? エリカさんにとって、ここが異世界だからとか、まるで関係ないですよね」
冷ややかに答える王太子様。
2人の会話の温度差が激しいわね…。
そして、王太子様、その言い方。確かにその通りなのでしょうが、その言い方…。
また、ロジャー様が暴れだしますよ? ほんと、やめて…。
と思ったら、剣呑すぎる目つきのロジャー様が、ついに王太子様に向かって手を振り上げた。
えっ、危ない! とっさに、私は手のひらをロジャー様に向け、守護の力を発動させてしまった。
気づいたロジャー様が、あわてて、私を止めようとする。
「おいっ、こら、ルシェル、やめろ…!」
驚いたように言うロジャー様に、私のうす紫色の守護の力が向かっていく。
どうやら、強すぎる守護の力をだしてしまったみたいで、あっという間に、ロジャー様は、うす紫色の膜に包まれて、見えなくなってしまった…。
私は攻撃することはできないので、つい、危なそうな人をみると、守護の力で覆ってしまいたくなるのよね…。
「すみません…。つい、うっかり、やってしまいました! エリカ様の浄化で、私の守護の膜をとりはらって、ロジャー様をだしてあげてください」
と、ロジャー様の主であるエリカ様に謝罪する。
すると、エリカ様は首を横にふった。
「あー、ちょっとうるさかったら、ちょうどいいわ。そのままにしときましょ」
えっ? エリカ様、それでいいの?! ロジャー様が知ったら、号泣しますよ?
そして、王太子様、なんか怖いです…。
というのも、私にむかって、とろりとした瞳をむけ、艶やかに微笑んでいる。
甘すぎて怖い…。冷たいよりも、甘いほうが怖さが増すわね。
不思議ね…。
なんて、現実逃避していると、王太子様が私の手をにぎりしめて言った。
「とっさにぼくを守ってくれたんですね、ルシェル。そんなに愛されているなんて…たまらなく嬉しいですよ。ルシェル」
…え? …愛?! なぜ、どうして、愛?!
いえ、違います!
王太子様でなくても、同じことをしていました!
私は、あわてて首をよこにふる。
「恥ずかしがらなくてもいいのですよ。ルシェル」
と、微笑みながら言う王太子様。
いえ、恥ずかしがっているのではなくて、本当に、全然、違いますから!!
読んでくださった方、ありがとうございます!
ブックマーク、評価、いいねもありがとうございます! 大変、励みになります!