離れて!
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あ! ということは、私、王太子様に嘘をついたことになるわね…。
結界の魔石の仕事で、ノーラン様たちが来ることは間違いないけれど、正確に言えば、仕事をしているのは新人魔術師のミケランさんであって、ノーラン様は遊びに来ているのよね…。
が、しかし、絶対ばれてはいけない。
だって、さっき、王太子様は、「遊びにくるなんて言おうものなら、魔術師長は即刻クビ」とか恐ろしいことを言っていたもの。
なんてことを考えてたら、ふっと、いい匂いが…。
いつの間にか下を向いていた私は、顔をあげる。
お美しい顔が目の前に…。
ん? どういう状態?
思わず思考が止まる。
美しい濃い紫色の瞳が、普段見ているより大きく見える。
すごーく近いってことよね?
って、なんで、こんな近くに?!
「…近い、近いです!」
私があわてて言うと、王太子様が、美しい笑顔のまま、冷たい視線で私を捕らえた。
「ルシェルに、ぼくが見えてないみたいだから、近づきました。ぼくの目の前で、あいつのことを考えるようなら、もっと近づきますよ?」
そう言って、怖い笑みを浮かべる王太子様。
私は首を横にぶんぶんとふった。
「これ以上、近づいたら、ひっついてしまいます! だから、離れて!」
叫ぶ私に、王太子様が、ことさら妖しく微笑みかけてきた。
「フフ…。早くそうなりたいですね、ルシェル」
ええ?! 何を言ってるの?! 話しが通じないわ!
次の瞬間、エリカ様がどなった。
「こらーっ、レオ! ルシェルが汚れる! 即刻、離れなさい!」
王太子様がため息をついて、エリカ様のほうを向いた。とりあえず、少し離れて、ほっとする私…。
「ひどいことを言いますね、エリカさん? ぼくは、ルシェルが答えてくれるのを待っていただけですよ? なぜ、あいつが、結界の魔石を持ってくるのか、ってね」
「そんなこと、ルシェルに聞かなくてもわかるでしょ? 結界の魔石は大事なものだから、ノーランが直接、見届けたいのよ。まあ、確かに、毎度毎度、ノーランが来るのは変だと思うわよ? 別に、魔術院の魔術師であれば、誰でもいいわけだし? どう考えても、ノーランが普通にルシェルに会いたいだけだと思うわよ? でも、それくらい、いいじゃないの! たまにだし、幼馴染だから、仕事にかこつけて会いにきたとしても」
エリカ様が一気にまくしたてた。
「それくらい? 何、おかしなことを言ってるのですか、エリカさん? たまにだろうと、あいつがルシェルに会いに来るなんて、いいわけないでしょ、エリカさん? そんなこともわからないのですか、エリカさん?」
なんとも攻撃的な、エリカ様への呼びかけ三段階に、思わず身震いする私。
もちろん、ロジャー様も黙ってはいない。
「レオーっ! おまえーっ! 決闘だ! 表にでろ!」
と、唸り声をあげている。
あの、ロジャー様…。
お忘れかもしれませんが、私たちの声が聞こえないよう、私たちのまわりにいる人たちには、私が守護をかけています。つまり、その守護が邪魔になって通り抜けは難しいです。
ということで、表にでるのは、少々お待ちくださいね…。
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