冗談にならないです
よろしくお願いします!
そこで、バシッと音がした。
エリカ様が、王太子様の背中をたたいたみたい。
「レオ! ルシェルを前にすると、独占欲がもれすぎてて、ただただ気持ち悪いわよ! ルシェルが、別にだれのことを考えようがどうでもいいでしょうよ!」
エリカ様が言い放った。
すると、王太子様はロジャー様に顔をむけた。
「叔父上は、エリカさんが、叔父上を目の前にしながら、他の男のことを考えていても冷静でいられますか?」
「そんなこと、冷静で、いられるわけがないだろ! エリカが他の男のことを考えるなんて、絶対に嫌だ! やめてくれ、エリカ! 俺のことだけを見てくれ! 俺のことだけを考えてくれー!」
ロジャー様…。
騎士の中の騎士と言われているのに、なぜ、エリカ様の前だとこんなポンコツになるの…?
エリカ様が、今度は、バシンッとロジャー様の背中をたたいた。
さっきより、ずっと大きな音だ。
「ロジャー、また、簡単に腹黒レオに誘導されてるわよ! しっかりしなさい、脳筋! 私の一番はいつだって、ロジャーよ! 何をしてても、何を考えていても、あなたが一番なんだから、ゆらがないで!」
「エリカ…」
一気に、ロジャー様の頬が染まる。
精悍な美丈夫なのに、恋する少女のよう…。
「エリカ、ごめん。俺の一番も永遠にエリカだ!」
ロジャー様が、感動した面持ちで宣言した。
…みんな、知ってますよ、ロジャー様。
「やっぱり、脳筋は、単純すぎて使えないな…」
ぼそっとつぶやいたのは、王太子様。
ちょっと、王太子様?! なんて暴言を吐くの?!
幸い、歓喜に満ちた顔でエリカ様にまとわりつくロジャー様と、あしらっているエリカ様には聞こえていないみたい。
驚いた目で王太子様を見ると、妖し気に微笑んだ。
「あ、聞こえてしまいましたか?」
ええ、真っ黒すぎる怖い発言が聞こえました…。
やっぱり、偽エルフとライバルだけはあるわね…。
「ちょっと、ロジャー、離れなさい!」
ついに、まとわりつくロジャー様にきれたエリカ様。
叱られたロジャー様がしゅんとして、大人しくなった…。
大型犬ロジャー様をふりきり、王太子様に向き直るエリカ様。
「そういえば、明日、ルシェルのところにノーランが会いに来るんじゃない? ちょうどいいわね。私がレオの魔力のこと、伝えておこうか?」
そう言って、悪い笑みをうかべるエリカ様。
ちょっと、エリカ様?! さっきまでの話の流れは、まるで無視?!
王太子様が、魔力のことを報告するのは拒否してたじゃないですか?
もしや、王太子様がロジャー様を誘導して遊んだ仕返しのつもりなのかしら?
でも、ノーラン様が関わると、エリカ様について言われたときのロジャー様のように、王太子様の沸点がさがりまくりなのは、知っていますよね!
冗談にならないですよ…?
と思った時には遅かった。
ほら、王太子様から不穏な気が流れ始めた。
「明日、あいつが、ルシェルに会いに来るのですか? ここに? おかしいですね。なんの用があって、…いや、なんの権利があって、会いにくるのでしょうか?」
権利…? 何、変なことを言ってるの…?
が、それより、とてつもなく低ーい王太子様の声に嫌な予感が…。
面倒なことになりそうです。
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