身をもって学んでいる
不定期な更新ですみません!
ノーラン様やマークス様のことを思い浮かべていると、ぞくっと寒気がした。
あ…、王太子様が、小首をかしげて、私を見ている。
美しい微笑みを浮かべているけれど、目が鋭すぎて怖い…。
思わず、背筋を伸ばす私に、
「ねえ、ルシェル。だれのことを考えていたのですか? まさか、あいつですか?」
ことさら優しい声で聞いてきた王太子様。
王太子様が、「あいつ」と呼ぶのは、偽エルフのみ。
なので、王太子様の言う通り、偽エルフのノーラン様のことを考えていました。正解です!
なーんて正直に答えてしまうと命取りになることを、私は身をもって学んでいる。
というのも、子どもの頃、お茶会で、二人のよくわからない言い争いに巻き込まれ、何度も面倒なことに陥ったもの…。
思い起こせば、一番最初のお茶会の時から、変な争いに巻き込まれたのよね…。
そのお茶会で、初めて会ったノーラン様。
物語からとびでたような、エルフ感満載のノーラン少年が、私を見るなり、にこやかに言った。
「ルシェルの髪の色って、ぼくとおそろい!」
エルフ好きとしては、うれしくなって、思いっきり、うなずいた私。
ノーラン様の髪の毛は、きらびやかな銀色で、私の髪の毛は地味な銀色。
まるで、印象は違うけれど、一応、同じ銀色。
すると、王太子様が、天使のような笑みを浮かべて、言った。
「ぼくの瞳の色と、ルシェルの瞳の色のほうが、ずっと似ています。おそろいです」
王太子様の瞳は、高貴な雰囲気の濃い紫色。私の瞳の色は、うすーい紫色。
これまた、まるで印象は違うけれど、一応、同じ紫色といえる。
「いや、ぼくの髪の毛のほうが似てるもんねー」
「いえ、ぼくの瞳の色のほうが、ずーっと似ています。そっくりです」
なんて、よくわからない言い争いが始まった。
でも、見た目は、それはそれは美しい二人だったので、エルフと天使が話しをしているような現実離れした光景になる。
まわりのメイドさんたちは、頬をそめたり、うっとりしている人たちもいたわね…。
でも、私は、二人の醸し出す空気が怖くて、ブルブルと震えだした。
その時だったわ。
「なら、比べてみようっと」
そう言って、ノーラン様が自分の髪の毛を一本ぬき、続いて、私の髪の毛も一本ぬきとったのは…。
「いたいっ!」
思わず、私が声をあげたとたん、王太子様が、なんとノーラン様をつきとばしたのよね。
で、怒ったノーラン様が魔力で部屋に暴風をおこした。
テーブルのお菓子がいっせいにまいあがった。
メイドさんたちは悲鳴をあげ、マークス様は大泣きし、控えていたノアが飛んできて私を捕獲した。
王宮の騎士さんたちも、飛び回る物をとりおさえたり、まさに混沌…。
そんなまわりの騒ぎに構うことなく、にらみあっている王太子様とノーラン様。
急な来客で席をはずしていた王妃様が戻ってきて、すばやく、その場をおさめてくれるまで、そんな状況が続いた。
王妃様に、2人はこってりと叱られたみたい。
傍若無人のノーラン様も、母親代わりに気をつかってくださる王妃様には弱いのよね。
ノーラン様にも弱点があって、ほんと良かったわ…。
「ルシェル、また、別のことを考えていますね?」
ひんやりした口調に、思わず、はっとして目の前を見る。
いけない! 過去の災難より、目の前の危機だわ!
読んでくださっている方、ありがとうございます!
ブックマーク、評価、いいねもありがとうございます! 大変励みになります。