表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/106

大聖女エリカ様

よろしくお願いします!

しっかりした甘さが美味しくて、もうひとつ、口にいれた。


すると、


ドドドドドドドッ


すごい足音が聞こえてきた。


あ、まずい! 来るわ…。


私は、あわてて、残った砂糖菓子をポケットにつっこみ、口に入っていた砂糖菓子をバリバリかみくだいて飲み込んだ。


そして、お菓子なんて食べてませんよー! という顔に整えた時、予想通りの人物が目の前にやってきた。


そう、長い黒髪をなびかせた大聖女エリカ様だ。

後ろには涼しい顔をしたロジャー様がぴったりとついてきている。


うん、いつも通りね…。


エリカ様はまっすぐな黒髪を腰までたらし、あでやかな大人の美貌で、とっても素敵な方だ。

特に、大聖女様としてお仕事をされる時は、きらきら光る癒しの力をまとい、うっとりするほど神秘的。


が、一旦、仕事を離れると、素のエリカ様は全く違う。

神秘的なところなどかけらもなく、ずばずばものを言い、思い立ったらすごい勢いで動く。

心は熱く、面倒見もよく、たくましい人。


それに、私がお菓子を食べていると、めざとく見つけ、神殿内であろうが、全力でおいかけてくる。

ノアと一緒で、見た目と内面があってないのよね…。


「見たわよ、ノア! あなた、また、ルシェルにお菓子を渡してたでしょ!」


「怖いだろ…。どこから見たんだ?」

小声でつぶやいたあと、ノアは、嘘くさい笑みを浮かべて、エリカ様に言った。


「見間違いでは?」


すると、エリカ様は、ぴしりとななめ上を指差した。そこは、神殿のバルコニーがある。


しまった! この中庭は、あそこから丸見えだわ…!


(…って、ノア?! あなた、護衛騎士でしょ?! あそこからエリカ様が見てたの、なんで気づかないの?! 休憩中とはいえ、いくらなんでも、だらけすぎでしょ?!)

という気持ちをこめて、私はノアをじとっとにらんだ。


すると、ノアは私を不満たっぷりの目で見返してきた。


(はっ? 聖女なのに、大聖女様の気配に気づかず受け取ったルシェルも同罪だろ?!)

という声が聞こえてくるよう。


そんな脳内の会話が成立するほど、私がノアからお菓子をもらい、こっそり食べて、それをエリカ様に見破られ、叱られるというパターンを懲りずに何度も繰り返している私たち。


「ノア、私は、この目でしっかり見たわ。決して見間違いじゃないわよ?」

ノアに圧をかけるエリカ様。


「エリカの黒曜石のような瞳は、美しいだけでなく、遠くまで見渡せるからね」

と、エリカ様を甘く見つめながら、優しく言うロジャー様。


うん、これまた、いつも通りね…。


というのも、ロジャー様は、エリカ様のことはなんでも褒める。

褒めようがないようなことも褒める。全く照れることなく褒める。


ロジャー様は、とても精悍なお顔立ちなのに、エリカ様を見る時は、恐ろしいほど甘い空気をまき散らす。


絵姿が大人気なのも納得な美男美女のお二人ではあるけれど、間近で見ていると、なにかしら微妙な気持ちになるのよね…。

巷に広まっている、お二人の大恋愛。その影響を受けて、不純な動機で護衛騎士になったノアも、何とも言えない顔をして二人を見ている。


「聖女様と騎士の恋愛…。俺が思ってたのと違うよな? やっぱり、大聖女様が変すぎるのか?」

ノアが、不敬極まりない言葉をぼそりとつぶやいた。


そのとたん、ロジャー様が、ノアとの距離を速攻で詰めた。

「なんて言ったノア? もう一回言ってみろ?」


エリカ様には絶対に見せない顔で、ノアを見据えるロジャー様。

すごい迫力に、さすがに怖い者知らずのノアも黙った。


が、エリカ様は、そんな二人の様子を気にすることもなく、私を見た。


「ほら、さっきのお菓子、だしなさい。ルシェル」


えええっー?!


私はしぶしぶ、お菓子をポケットから出し、手のひらにのせ、エリカ様に見せた。


「ほら、こんな小さなお菓子ですよ。これくらいなら食べてもいいのでは?」


私の言葉に、真顔になったエリカ様。

あ、このお顔…。面倒な過保護スイッチが入ったみたいよね…?



早速読んでくださった方、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ