ノーラン様
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でも、ロジャー様が驚くのも無理はないのよね。
だって、この国には、「守護、癒し、浄化」と言った聖女の持つ力とは別に、魔力を持つ人がいるのだけれど、聖女同様に、非常にまれな存在。
だから、力を持っていれば、どうしても目立つ。まわりに隠しとおすのは難しいと思う。
しかも、近隣諸国であっても、そのような力が貴重なのは同じ。誰に狙われるかわからない。
なので、聖女の力を持つ人は聖女として神殿で働き、魔力を持つ人は、魔術師として魔術院で働く。
つまり、国のもとで働くことで、国が保護する意味もある。
神殿と魔術院は、王宮と並んで守りが固いしね。
「レオ、何故、そんな大事なことを黙ってた? とにかく、すぐに魔術院に報告して、魔力量を調べてもらわないとな。しかし、王族で魔力があった者は聞いたことがないが…。それに、レオは王太子。ゆくゆくは、魔術師の王みたいになるのか? いや、王の魔術師か…?」
すっかり、混乱しているロジャー様。
「叔父上。魔術院への報告はやめてください」
冷たい声で、きっぱりと言い切る王太子様。
「いや、そういうわけにはいかないだろう? 確かに、魔力を報告する義務はない。だが、聖女の力と同じく、魔力も適切に使いこなすのは、独自には難しいと聞く。やはり、きっちり調べてもらって、使い方を指導してもらったほうがいいのではないか? すぐに、魔術師長のノーランに連絡する」
ロジャー様の言葉に、王太子様の全身から冷気がではじめた。
「魔術師長に頼まなくても、私は自分の力がどれくらいで、どのように使えばいいか、しっかり把握しています。国のために使うべき時は、しっかり役目を果たしますから、ご心配なく」
王太子様の目が、完全に拒否している。
「レオって、ほんと、ノーランが嫌いよね。雰囲気はまるで違うけど、芯は似てるから、仲良くなれそうなのにね。それに、二人が結びつくと無敵になると思うんだけど…? 同族嫌悪かしらね?」
と、エリカ様が首をかしげる。
「ぼくは、ルシェルがいてくれれば無敵になりますので、魔術師長は全く不要ですよ。エリカさん」
冷え冷えと言う、王太子様。
え? なぜ、そこで私?!
でも、そういえば、魔術師長のノーラン様と王太子様が会うと、空気が冷えるわよね…。
王太子様とノアの組み合わせよりも、殺伐とした空気になると言うか…。
ノーラン様は、魔術院の魔術師長で、現在20歳。
王太子様より2歳年上。
やっぱり、年齢も近いから、ライバルなのかも。
だって、ノーラン様は、若干16歳の時、圧倒的な魔力でもって、魔術院のトップにつくほど魔術師として優秀というか、天才。王太子様も優秀さでは誉れ高い方だしね。
ちなみに、ノーラン様は、魔術院にこもることなく、国中を飛び回り、突如、人々の前にあらわれる。
そのため、国民に、とても人気がある。しかも、本当か嘘かもわからない噂が多々あるのよね。
なかでも有名なのは、「人ではなく、辺境の森に住んでいたエルフ」という噂。
というのも、ノーラン様は辺境伯様の次男。
幼少期より膨大な魔力があったけれど、せめて幼少の頃は一緒に暮らしたいと辺境伯様は、国に報告しなかった。
が、遊んでいた6歳のノーラン様が城を半分壊したため、ノーラン様が7歳になると、泣く泣く魔術院にいれたらしい。
これも人々の間で広まっている有名な噂のひとつ。
仕事の合間に、ノーラン様本人に事実かどうか聞いてみたら、「城は半分じゃなくて、全部壊れたんだけどねー」と、笑ってたっけ…。
こんな感じで、ノーラン様の中身はまさに魔王。
エルフのような神秘的な存在とは、かけ離れている。
小さい頃、エルフのお話が大好きだった私としては、大きな声で違うと反論したい。
というか、エルフに甚だ失礼よね、と思っている。
もちろん、小心者の私は、恐ろしすぎて本人には言えないのだけれど…。
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