やっぱり怖い
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目の前につきつけられた、王太子様の石は大きめの楕円形で、ペンダントのように、金の鎖がついている。
きらきらと輝くゴージャスな感じは、それは、もう見てはいけない感が満載よね。
「ルシェル。これがぼくの受け継いだ石です。そして、ルシェルの指輪の石はこの石から取りました。そう、ふたつの石は一つなのですよ。まるで、ぼくたちみたいですね」
王太子様はそう言うと、ぞくっとするような妖しい笑みを浮かべた。
いえいえ、何を言っているのですか?! 笑っている場合ではありませんよ?!
二つしかない石が、私の指輪に入ってると知った時点で、なんとなく予想はついていた。
でも、聞きたくなかったこの事実。
そして、王太子様…。そんな貴重な秘宝を私の指輪にいれるなんて、一体何をしているのですか…?!
ほんと、やめて!
と、ここで、ロジャー様が驚いたように、大きな声をあげた。
「ちょっと待った、レオ! その石から取ったっていったな? もしかして、その石を割ったということか?!」
こんな至近距離で大声があがったのに、王太子様はロジャー様をちらっとも見ることなく、何故か、私に微笑んでいる。
ほんと、怖いわね…。
そして、王太子様は私を視線で捕らえたまま答えた。
「ぼくはルシェルに説明しているのに、待てない人が多いですね…。まあ、放っておくとうるさいので、答えますが、そう、ぼくの石を割りましたよ。それが何か?」
私を見る視線は恐ろしく甘く、ロジャー様に答える声は極寒。
やっぱり、怖いわね…。
「いや、それは、無理だろう?! その石について、兄上がこっそり教えてくれた時、絶対に割れないと言っていた。昔、王を退位したものが、石を返したくなくて、密かに石を割り手元に置こうとしたが失敗し、その衝撃で命を取られたと聞いたぞ!」
ロジャー様が、一気にまくしたてる。
えっ…?! 石を割ろうとして、失敗したら、そんな恐ろしいことに…?!
もしや、それを知っていたのに、王太子様は割ったの…?!
動揺しまくる私を見て、王太子様が目を輝かせた。
そして、何故か、「ルシェル、かわいい」と意味のわからないことをつぶやいている。
「たがが外れたのかしら? レオの気持ち悪さが一気に増したわね…」
エリカ様があきれた顔で王太子様を見ている。
そして、やっと王太子様は私から視線を外し、ロジャー様のほうを見た。
「ぼくは、そんなへまはしませんよ。石が割れなかったのは思いが弱かったからでは?」
「思いが弱いと割れないとは、どういうことだ? もしや、なにか強く念をこめながら、特別な呪文とかを唱えないといけないのか?」
ロジャー様がいぶかし気に聞いた。
「魔女でもあるまいし、何を言ってるんですか、叔父上? もちろん、愛ですよ。愛の強さが伝わって、石もルシェルに使って欲しいと願い簡単に割れたのでしょう」
「うわ、鳥肌がたったわ…」
エリカ様が、腕をさすっている。
そして、私もなにやら底知れぬ恐怖でぞわぞわしております!
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