遠慮じゃないです!
読んでくださっている方、ありがとうございます!
結局、私は、今、王太子様に両手をがっちり捕獲され、向かい合っている状態です…。
そんな私たちをのぞきこむように身をのりだしているエリカ様。
その隣にぴったりひっついているロジャー様。
癖が強く、圧の強い人たちに囲まれ、絶体絶命の私。
というか、正直、うっとうしい。
離れてー!と、叫びたくなる、暑苦しさよね…。
心が荒れ放題の私にむかって、やけに、甘い雰囲気をまき散らしながら、王太子様が話し始めた。
「ルシェル。この指輪の石に正式な名前はありません。王位につく者だけが持つ秘宝のため、公に名前を呼ぶこともないんですよ」
ええっ?! いきなり重すぎる内容なのですがっ?! ほんと、やめて?!
おびえる私を楽しむように、王太子様が美しく微笑んで話を続ける。
「この名もない石は、王家にふたつあります。そして、代々、ひとつは王に、もうひとつは王太子が持つようにと受け継がれてきました」
「あら、たった、ふたつしかないの? じゃあ、今は王とレオが持っているとして、ルシェルの指輪の石は何? 幻のみっつめ?」
エリカ様が怒涛の勢いで、王太子様に問いかける。
が、王太子様は、エリカ様がまるで見えてないかのように、私をじっと見ている。
なになになに、怖すぎるわっ…!
「ルシェルにわかりやすいように、ルシェルのために説明するので、雑音は放っておきましょう。順に説明していきますからね、ルシェル」
ちょっと、王太子様?! 一体何を言っているのです?!
いくら反抗期だからといって、エリカ様を無駄に怒らすのはやめてください!
ほら、ただでさえ暑苦しいのに、ロジャー様がすごい殺気を放ちだしたじゃない…。
と、思ったら、案の定、ロジャー様が王太子様の顔の前にぐいっと近づく。
「おい、レオ。エリカが聞いたことを、とっとと話せ。無視するようなら、たたきつぶすぞ」
ドスの効いた声をだすロジャー様。
普段の品の良さが消え失せ、荒くれ者と化したロジャー様。
ちょっと、ロジャー様?! そこで、言い合うのは本当にやめてください!
王太子様に捕らえられている私の頭の上ですからね?!
「邪魔ですよ、叔父上。それに話が進みませんが、いいのですか?」
王太子様は、淡々と言った。
すると、エリカ様が悔しそうな顔をしながらも、
「ロジャー、だまってて!」
そう言って、ロジャー様の服をひっぱり、ご自分の隣、ロジャー様の定位置に引き戻した。
あれ? なにか、懐かしいわね…。
あ、そうだ。
実家の伯爵家で飼っていた大型犬のルン。猟犬で、闘志あふれる犬なのだけれど、お父様に「待て」と言われると、こんな顔で、そばに控えてたわよね…。
今のロジャー様は、待てをしているルンにそっくりだわ…。
ああ、家に帰りたくなってきた…。
なんて現実逃避をしていると、王太子様が、麗しい笑みを浮かべた。
「また、ルシェルは別のことを考えていますね。ぼくの話に集中してください。でないと、もっと近づいて、ルシェルの耳に直接しゃべりかけますが、いいですか?」
「いや、いいわけないです! ダメです! それは結構です! 集中します! すみません、王太子様!」
私があわてて言う。
エリカ様が顔をしかめ、「レオ、本当に気持ち悪いわね…」と、つぶやいた。
が、そんな声は聞こえてもないように美貌の顔をゆるませた。
「では、ルシェル。まずは、ぼくの持っている石を見せますね。いつも首にかけているんですよ」
そう言うと、襟のボタンをはずし、首のあたりから手を服の中にいれた王太子様。
「見せるって、その秘宝を?! いやいやいやいや、本当に結構ですっ! どうぞ、秘宝は秘宝のままで!」
拒否の気持ちを込めて、全力で頭を横に振る私。
「遠慮しないでくださいね、ルシェル」
「いや、遠慮じゃなくて、本当に結構ですっ!」
と言いきった時には、金色の鎖につながれた緑色の石が、目の前に…。
あーあ、見てしまったわ…。
読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださってありがとうございます!
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