秘密
よろしくお願いします!
私の手をすみずみまで見終わったエリカ様が、顔をあげた。
そして、王太子様にむかって、勝ち誇ったようにフフンと笑う。
「わかったわ、レオ! 秘密は、ルシェルのこの指輪でしょう?! 婚約した証の指輪よ! そうでしょ?!」
怒涛の勢いで、たたみかけるエリカ様。
が、王太子様は、あきれたような目でエリカ様を見た。
「それくらいのことで自慢気に言われても困りますね。右手に何かあるとヒントを言ったのですから、それが指輪だということは一目瞭然でしょう? ルシェルの右手には、ほかに仕掛けられるところはないのですから。それより、エリカさん。大聖女様なのに、まだ、その指輪の秘密に気づかないのですか? 鈍ってるんじゃないですか?」
流れるように話しながら、時折毒をおりまぜる王太子様。
これって、確実にケンカを売っているわよね?!
やはり、絶賛、反抗期なのかしら?
そして、エリカ様の使い魔と化したロジャー様が、すごい形相で王太子様をにらんでいる。
猛獣みたいな目で、今にも獲物を食い殺しそう…。
でも、飛びかからない。いえ、飛びかかれないのね…。
即座に飛びかかりたいだろうことは、見てるだけで伝わってくるのに…。
理由は言うまでもなく、エリカ様に従っているため。
さっき、エリカ様に「どいてて」と言われたことを守るために、王太子様に飛びかかりたいところを、なんとか我慢しているのじゃないかしら。
でも、エリカ様がひとこと、「いけ!」と言えば、間違いなく飛びかかるわよね。
しかし、婚約した証の指輪に一体何があるのかしら?
素材は素晴らしいけれど、私には、ごく普通の指輪にみえる。
6歳で王太子様と婚約をした時に、王家から授けられた指輪。時折、サイズの変更をしながら、ずっと指にはめてきた。
つまり10年間はめているのだけれど、今まで、一度たりとも、不思議なものを感じたことはない。
ちなみに、その指輪というのは黄金で、王太子様と私の名前が刻まれ、その真ん中に、緑色のエメラルドが入っている。が、それも全く不思議じゃない。
というのも、エメラルドは癒しの石と呼ばれ、聖女が持つと力が増すと言い伝えられているからね。
エリカ様はといえば、王太子様の言葉に、またもやあおられ、火が着いた様子。
「そんなこと、わかってるわよ?! 要はこの指輪のからくりを見つければいいんでしょう?!」
目をぎらつかせ、挑戦的に言い返すエリカ様。
そして、私の手をさらにひっぱり、指輪のはまっている右手の中指に目をひっつけて、至近距離で凝視するエリカ様。
「あの…、さっきからひっぱられっぱなしで、手が疲れたんですが…」
エリカ様に訴える私。
「ごめん! でも、もうちょっとだけ待って、ルシェル。すぐに当てるからね!」
そう言って、手を放さないエリカ様。
負けず嫌いの血が騒ぎまくりよね。
とにかく、私の手を放してほしい…。
こうなったら、エリカ様に当てさせるのではなく、さくっと王太子様に答えてもらったほうがいいわよね。
一刻も早く私の右手を自由にするために。
秘密を聞いたとしても、きれいさっぱり忘れてみせますから、婚約を引き継いでも殺さないでくださいね。
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