表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/106

不思議とかじゃない

よろしくお願いします!

私は最後のあがきとばかりに、私の手を放さない王太子様に必死に訴えた。


「あの、…エリカ様にせっつかれるまで、王太子様…いえ、レオ様は話したくなさそうでしたよね! そんな秘密にしたいことを、今、話さなくてもいいのでは?! 特に、私は聞かなくてもいいのでは?!」


「確かに、今はまだ、話すつもりはありませんでした。でも、そこまでルシェルが聞きたがらないと、何故か聞かせたくなります。不思議ですね」

そう言って、麗しく微笑んで、小首をかしげる王太子様。


いやいや、不思議とかじゃないですよ! やめて?!


「あきらめなさい、ルシェル。そして、隠していることを、とっとと話しなさい。レオ」

と、エリカ様。


そうエリカ様は、かなりせっかち。


「そうだぞ、ルシェル。あきらめは肝心だ。エリカが聞きたがってるからな」

と、いつも通り、常にエリカ様優先のロジャー様らしい発言が飛び出す。


仕方ないわ。こうなったら、聞き流しましょう。


私は石になる。石になる。石になる…。


ん? なにか、私の手の甲にやわらかいものが…って、えええ?!


王太子様がつかんでいる私の手の甲に口をひっつけている!


「ちょっと、な、な、なにをしているのですかっ…!」

思いっきり手をひっぱりながら、叫ぶ私。


「ん-、ぼくの話に集中してほしいから」

そう言って、王太子様が私の手を持ったまま嫣然と微笑んだ。


「だったら、口で言いなさいよ! ルシェルに、むやみに触るんじゃない! そして、さっさと言いなさい!」

王太子様に更に近づき、怒りの声をあげるエリカ様。

至近距離での、すごい声の大きさに、王太子様の笑みが消える。


若干ふてぶてしく思える表情で、エリカ様を見返す王太子様。


「うるさいですね…。だから、答えは、ルシェルのこの手ですよ。叔父上でさえ、この手を見ただけで察したみたいなのに、まだ気づかないとは、思考能力がおとろえたのですか? エリカさん」


ちょっと、王太子様? なんて毒舌! 死ぬ気ですか?!


と思った瞬間、文字通り沸騰した顔で、ロジャー様が王太子様の胸ぐらをつかんだ。


ちょっと待って、ロジャー様! 

私の手が危ないじゃないですか?! 

王太子様は、私の手はしっかりつかんだままなので、そこで、けんかはやめてー!


「おい、レオ! だれにむかって、おとろえたなどと言っている?! おとろえたのは、エリカにそんなことを言うお前の頭だろ? エリカに暴言を吐くとは、おまえ、消えるか? ああ、やはり、消えたいんだな。なら、俺が消してやる!」


今度は、王太子様を消しにかかったロジャー様。暗殺者みたいだわね…。


「うるさい! ちょっと考えてるんだから、ロジャーはだまってて! それと、邪魔。そこにいたら、ルシェルの手が見えないでしょ? ちょっとどいてて!」

エリカ様が、ロジャー様の服をひっぱった。


そのとたん、ロジャー様は、素早く王太子様の胸ぐらから手を放し、エリカ様の隣の位置にまいもどった。


いつなんどきでも、すごい従順さよね…。

ロジャー様が、エリカ様の使い魔に見えてきたわ…。


エリカ様は、王太子様から私の手を奪い取り、食い入るように見はじめた。


「答えがわからないようなら、言いましょうか? エリカさん、早く聞きたいのでしょう?」

王太子様が挑戦的に言った。


「レオもだまってて! 私が答えを見つけるわ!」

エリカ様が、私の右手をひっくり返したりしながら、王太子様に大声で答える。


そう、エリカ様は、すごい負けず嫌い。

すっかり、王太子様の言葉に、あおられている。


そして、エリカ様…。


さっき、ロジャー様を王太子様に簡単に誘導されている、脳筋の根性をみせて、などなど、叱っていましたが、残念ながら、エリカ様も今、似たような感じに見えてます…。

すっかり手玉にとられて、遊ばれてます…。


だってほら、必死で考えているエリカさんを見る王太子様の笑顔。

悪魔みたいだもの。

読んでくださった方、ありがとうございます!

ブックマーク、評価、いいねをくださった方、とても励みになります。ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ