あきらめたらダメ!
更新が遅くなってすみません!
王太子様に右手を捕獲されたままの私。
耳をふさごうにも手が使えない。
とはいえ、このままでは、聞いてはいけない秘密を聞いてしまうわ。
ということで、不敬であろうが、声を張って、今にも話しはじめそうな王太子様を遮った。
「エリカ様! 何も聞こえないように、私にも守護をかけてください!」
そう、自分で守護をかけたいのはやまやまだけれど、何故か、私の場合、守護も癒しも自分にはかかりにくいのよね。
「え? ルシェルも聞いて大丈夫なんでしょ? 婚約者だもの」
と、エリカ様が王太子様に不思議そうに聞く。
私はぶんぶんと首を横にふって、目で訴える。
エリカ様! そんなことを聞かずに、私に、ただちに守護をかけてください!
すると、王太子様が、エリカ様に言い返す。
「もちろんです。エリカさんに話すくらいなら、当然、ルシェルにも聞いてもらいますよ」
いえいえ、もうすぐ引き継ぐ婚約者ですから、謹んでご遠慮いたします!
内心で叫ぶ私を見て、王太子様の美しい目の奥が鈍く光った。
「ルシェル。何故、そんなに聞きたくないのですか? ルシェルは、ぼくの大事な婚約者でしょう?」
いえ、大事ではないです。もうすぐ終了する婚約者です。できるだけ早く、引き継ぐ予定ですので…。
なんて、言えるわけもない。しかし、このまますんなり聞くわけにはいかないわ!
だって、もしも、王家の秘密みたいなものだった場合、婚約者ではなくなった時、聞いてしまった私はどうなるの?!
記憶を消されるとか、最悪、存在を消されるとか…?!
ダメだわ! やっぱり、聞いてはダメ! あきらめたらダメだわ!
私は声をふりしぼり、王太子様に思いのたけをぶつけた。
「すごーく重大な秘密のようですから、私は聞けません! 確かに、今は婚約者ですが、まだ、結婚したわけでもないですし、王家に入ったわけでもありませんから。未来はどうなるかわかりませんよ! なので、私としては、到底聞くことはできません!」
ふー、言いきったわ! 全身全霊でお断りしたわ!
「へえええ? …まあ、確かに、今は、ルシェルは婚約者ですけどね…」
と、ひんやりした声をだす王太子様。
体がぞくっとしたけれど、ここで、ひるんではいけない!
私は力強くうなずいて、王太子様に同意した。
「はい、その通りです! 今は、婚約者です! ですが、未来はわかりません!」
すると、王太子様の目がすーっと細くなり、妖しい雰囲気を醸し出す。
そして、捕まえている私の右手をさらさらとなではじめた。
「ちょっと、王太子様?! 一体、何を?!」
私は驚いて、声をあげた。
様子をうかがっていたエリカ様が、はっとしたように、
「こら、触るなー!」
と、言いながら、王太子様の背中をおもいっきり叩いた。
が、王太子様は全く動じることなく、鋭い視線で私を見据えたままだ。
蛇ににらまれたカエル…。
ええと…、私は今、命を狙われているのかしら?!
と、焦りだした時、王太子様が口を開いた。
「ルシェルは、本当に困ったものですね。王太子様ではなく、レオと呼んでください。それと、今は、婚約者ですが、未来は王妃です。当たり前でしょう? やはり、ここは、婚姻を早めましょうか? しつけ…いえ、懇切丁寧に私の気持ちを行動で示す必要がありますからね」
そう言って、凄絶なほど美しく微笑んだ。
…あの、今、しつけって言いましたよねっ?!
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