聞いてはいけない
よろしくお願いします!
気持ちの悪いロジャー様はともかく、二人はにらみあったままだ。
こうしてみると、二人に血のつながりはないけれど、ロジャー様と王太子様よりも、この二人のほうが似ているような気がするわ。
そして、無言のにらみあいの後、先に目をそらしたのは王太子様。
「しつこいな、エリカさんは…」
ため息とともに、あきれたようにつぶやく王太子様。
「なんですって?!」
エリカ様の声が更にヒートアップしかけた時、王太子様が、いきなり私の右手をつかんだ。
「えっ? なんで…?!」
びっくりして王太子様を凝視する。
王太子様は、私の手をつかんだまま、エリカさんに淡々と言った。
「本当は言いたくないのですが、エリカさんがどうしても聞きたいと言うのなら仕方がないですね」
ん…? ええと、王太子様の言葉と行動が全く結びつかない…。
しかも、今まで、婚約者としてエスコートされる時に軽く手を添えられることはあっても、こんな風に、手をつかまれたことなんてない。
と思ったら、王太子様がつかんだ私の右手を持ち上げて、両手で包み込んだ。
は?! 王太子様、一体どうしたの?! 何が起きているの?!
私はパニックになりながらも、両手で包み込まれた手を引き抜こうと、ひっぱった。
が、思いのほか、がっしりとにぎられていて、びくともしない。
「ねえ、レオ?! 何をしているの?! 話がまーったく見えないのだけれど? 私の質問に答えず、何故、いきなり、ルシェルの手をにぎっているの?! すぐさま放しなさい! このムッツリめー!!」
エリカ様が叫んだ。
ムッツリメー?
なにかしら、それ。聞いたことがない言葉ね。
ということは、エリカ様のいた異世界の言葉ね。後で意味を聞いてみよう。
…なんて、一瞬、逃避していた私。
そんなことより、私の手を王太子様の手から救出しないと!
私は、再び、王太子様から自分の手を思いっきりひっぱった。
が、やっぱり、びくともしない!
王太子様は動揺する私を見て、うっすらと美しく妖しい笑みを浮かべた。
そして、きれる寸前のエリカ様の顔の前に、にぎりこんでいた私の手を差し出して、言った。
「これが答えですよ、エリカさん」
…答え? どういうこと?
エリカ様も眉間にしわを寄せて、王太子様と私の手を見比べて考えているよう。
ここでロジャー様がはっとしたような顔をした。
「レオ! まさか、おまえ、あれをルシェルに…?」
「あれって、何?」
エリカ様がロジャー様に聞く。
が、ロジャー様は一瞬口ごもった。そして、王太子様を見る。
ロジャー様が、エリカ様に聞かれて即答しないなんて珍しいわね…。
例え、誰と話していようと、何をしていようと、エリカ様に話しかけられたら、すぐさま答えるロジャー様なのに…。
すると、
「ぼくが説明しますよ、叔父上」
王太子様が厳かに言った。
なにか軽いものではないような感じよね…。
どうしよう…。全く聞きたくない。
筆頭聖女と婚約者を引き継ぐ予定の私は、むしろ、聞いてはいけない気がするのだけれど…。
読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださっている方、ありがとうございます!
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