どういう意味?
よろしくお願いします!
まず、守護をかける人たちの範囲を目で確認し、手のひらをむける。
軽くでいいと言われたので、さらっと、守護する人たちに膜がかかるようにイメージした。
すると、たちまち、私の手のひらから、さーっとうすい紫色の霧がでてきて、ひろがっていく。
そして、エリカ様とロジャー様、王太子様と私の4人以外には、うすーい紫色の膜がかかった。
とってもうすいので、しっかりと透けて見える。
もし、強固な守護が必要なら、膜を何重にもするイメージで祈れば、視界も完全に遮断できる。
けれど、今回は音だけでいいからね。
一応、王太子様の背後からこちらを凝視しているノアに聞いてみる。
「こっちの音、聞こえる?」
(きこえない)
私の口の動きを読んだノアが、すぐに答えてきた。
それを見て、エリカ様が満足そうにうなずいた。
「さすが、ルシェル。あっという間に守護するなんてすごいわ! しかも、今回みたいに軽い守護から、頑丈な守護まで、自由自在だものね!」
「ありがとうございます!」
最近、エリカ様には、お菓子の盗み食いで叱られることが多かったから、久々に褒められると嬉しいわ。フフフ。
…って、ノア!
ちょっと、なにしてるの?!
王太子様の背後にいるノア。だけど、その間には私の作った守護の膜がある。
透けて見えるほど、うすーい膜とはいえ、そこは破れない壁みたいなもの。
ノアがその膜にはりついて、私を見ている。
エリカ様があきれたようにため息をついた。
「ノア…、音を遮断したもんだから、恐ろしいほどルシェルの口の動きを見てるわよね。護衛騎士としては見上げたものだけれど、なにか違うというか…。気持ち悪いというか…。怖いというか…。もしや、これはヤンデレ…?」
「ヤンデレ…?」
聞いたこともない言葉に、思わず聞き返した。
「異世界の言葉よ。意味は…、また今度説明するわ。まあ、今は見なかったことにしましょ」
と、エリカ様が話しをしている横で、王太子様が、いきなり私の両肩をおさえた。
え?! なにっ?!
驚いている間に、くるっと横をむかされた。
王太子様のほうをむいて立っていた私は、今は、エリカ様とロジャー様の方を見ている。
ええと、何がおきたのかしら…?
すると、横から、王太子様がひんやりとした声で言った。
「野犬の目がうるさいですから」
「野犬って…?」
「ルシェルの元護衛騎士で、今や赤の他人です」
あ、ノアのこと?!
野犬って…。そう言えば、さっきは猛犬って言ってたわよね?
猛犬から野犬へ。それはいいのか悪いのか? どっちもだめな例えなのか…?
混乱している私に、更に王太子様が冷たい声で言い募る。
「赤の他人が、ルシェルの口を見続けるなんて許せません。だから、ルシェル。そちらを向いていておいてくださいね」
つまり、ノアが私の口を見ないように向きを変えたってこと?!
王太子様を見ている向きだと、必然的にその背後で膜に張り付いているノアが見える。
しかし、横をむかされた今は、エリカ様とロジャー様しか見えない。
でも、許せないって…なんでかしら?
そう思った時、
「もしや、こっちもヤンデレ…? うちの娘、男運が悪いのかしら…?」
エリカ様が、嫌そうにつぶやいた。
また、ヤンデレ…。一体、どういう意味だろう?
そして、エリカ様の口ぶりでは、いいものではないということよね。
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