浄化
よろしくお願いします!
「ちょっと、そこらへん、よどんだ気が満ちてるわよ!」
そう言うやいなや、エリカ様は私たちに向かって手をかざした。
きらきらとした光がでて、私たち3人が包まれる。
あっという間に、すっきりとした気に変わる。アリシアさんの震えもとまったみたい。
さすが、浄化が得意なエリカ様だわ!
「エリカの浄化は、なんて、美しいんだ! おまえら、浄化してもらって、うらやましいな」
うっとりとした顔で言うロジャー様。
「でも、人の心までは浄化できない。だから、そこの2人! これ以上、神殿を変な気で汚すなら、つまみだすわよ!」
仁王立ちで言いきったエリカ様。
そして、王太子様をきっと見る。
「王太子様は、何故、ルシェルを怖がらせていたのかしら?」
すごい迫力で王太子様に問うエリカ様。
王太子様の麗しい笑顔が、すっと抜け落ちた。
「話をしていただけで、大事な婚約者を怖がらせてなんていませんよ、エリカさん…。それと、王太子様なんて呼び方はやめてください。いつもどおり、レオでいいです。鳥肌が立ちますから」
私は神殿に着てすぐに王太子様と婚約をした。だから、王太子様を子どもの頃から知っている。
いつも上品な美しい笑みを浮かべて、すごく礼儀正しい完璧な子どもで、見た目は、まさに理想の王子様。
いつ会っても、周りの人たちにほめたたえられていたわ。
まあ、私は怖くて、本能で逃げまくっていたけどね…。
が、エリカ様は、会うたびに、「化けの皮をはがすわよ!」と言いながら、突進して構いまくっていたっけ。
その長年の行動の結果、エリカ様を前にすると、王太子様の笑顔がはがれるようになったのよね。
つまり、エリカ様の計画が成功したってことかしら…?
ということは、今の表情の抜け落ちたような顔が素顔? え、それも怖いわね…。
そんな王太子様に、つかつかっと歩み寄ったロジャー様。
「おい、レオ。言うに事欠いて鳥肌が立つだと?! エリカに呼ばれて、そんなこと、ありえないだろう?! どんな呼ばれ方をしようが、ありがたく返事をしろ!」
エリカ様のことになると、やたらと沸点が低いロジャー様。
そして、そんなロジャー様にすっかり慣れている王太子様。
「はいはい、わかりましたよ。叔父上」
淡々と流している。
「それから、ノア! あなたもなんでルシェルのそばにいるの? ノアは、もう、ルシェルの専属護衛騎士じゃないでしょ? 今日から、ルビーの専属護衛騎士なんだから、ルビーのそばにいないとダメじゃない」
すると、ノアは平然と答えた。
「ジャックが職務を放棄していましたので、非常事態として、筆頭聖女のそばにいました」
「えっ?! 俺?! …いえ、職務を放棄などしていませんっ!!」
慌てて答えるジャック。
そんなジャックを見て、エリカ様が首をかしげた。
「ねえ、ジャック…。あなたは、なんで、ルシェルから離れたところに立っているの? もしかして、筆頭聖女の専属護衛騎士になりたくなかった?」
と、眉間にしわを寄せて聞くエリカ様。
そのお顔、すごい迫力ですよ!
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