これから
最終話になります。
あれから数か月がたった。
週に一度、ビルト君は魔力について学ぶために魔術院に行く以外は、私について、聖女と同様の仕事をしている。
癒しの力も、どんどんだせるようになってきた。
しかも、本名を名乗りだしたからか、ふっきれたように活発になったビルト君。
美少女ルビーさんが幻だったかのように、今は、すっかり、美少年毒舌キャラへと変貌してしまった。
かわいいルビーさんが懐かしくなって、「また、ルビーさんに会いたいなあ。ちょっとだけ見せて?」と頼んで、冷たい視線をむけられたりしている私。
そして、今も目の前で、あの偽エルフのノーラン様と、ひるむことなく言いあっているビルト君。
王太子様以外で、そんなことができる人がいようとは……。
で、何をもめているかというと、魔術院から届けられた結界の魔石に守護の力をこめるという、あの例の仕事。
今日が、その日だったので、ノーラン様がミケランさんと一緒に神殿に来たのだけれど、ビルト君が物申した。
「僕は魔力もあるので、魔石を預かってきて、ルシェルさんに守護の力をいれてもらったら、また、魔術院に運びます。だから、ノーラン様はきてくださらなくても大丈夫です。っていうか、もともと、ノーラン様はいらないですよね? ミケランさんしか仕事してないし」
「なに、勝手なこと言ってんの、ビー! ルシェに会える大事な仕事をとったら許さないんだからねー!」
と、わめくノーラン様。
「というか、その仕事、僕とルシェルでやりたいですね。ルシェルは知ってるけれど、僕は魔力持ちですから」
何故か、話に加わっている王太子様。
「ちょっと! また、王太子がここにいるー! それに、なんで、そんな重要な秘密をさらっと暴露してんの?」
不満げなノーラン様。
そう、あれから、王太子様はやたらと神殿にくるようになった。
仕事の合間をぬってやってきては、私の仕事を見ている。
一体、どうしたのかしら……?
3人が不毛な言い合いをしていると、通りがかったエリカ様が参戦した。
もちろん、ロジャー様も。
騒ぎが大きくなり、私のそばにいたノアに飛び火する。
わちゃわちゃとしている様子に、思わず笑ってしまった私。
このにぎやかな場所が私の居場所なんだなあって思うと、心の奥がふわっとあたたかくなった。
まあ、ビルト君のことは色々あったけれど、おさまるところにおさまったかな……。
なーんて、言っている場合じゃない。
筆頭聖女の役目と婚約者様をルビーさんに譲るという計画はふりだしに戻ってしまったんだから。
でも、王太子様にかけてもらった、あの言葉。
私の聖女としての仕事ぶりを認めてくれていたことが、ものすごく嬉しかったのよね。
聖女の仕事に自信がもてるようになってきたのはそのせいかも。
王太子様が訪ねてくるのが、楽しく思えるようになってきたことも……。
とはいえ、まだ、あきらめてません、私!
いつか美味しいお菓子を自由に食べ歩く日々を夢見て、今日も聖女の仕事をがんばります!
(了)
※ これにて、本編は完結となります。
後日談はまた書きたいと思っています。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!!
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