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告白

「おっしゃるとおりです……。私の名前はルビー・ロランではありません……。本当の名前は、ビルト・ロランです……」


ん? ルビーさんじゃなくて、ビルトさん……? 


「聖女の試験を受けることを決めたとき、本名のビルトをもじって偽名をつけました……」


本名をもじる……? ビルト、ビル、ルビ、ルビー……あっ、そうか!


「本名をひっくりかえしたのね! なんて、わかりやすいの! しかも、瞳の色に合ってるなんてセンスがいいわね。すごいわ!」


みんなが一斉に私を見る。

なんというか生暖かい視線……。


えっと、みなさん、どうかしましたか? と思ったら、モリージャ様が楽しそうに笑った。


「やっぱり、ルシェルがいると和むのう」


すると、エリカ様が大きくうなずいて、あきれたように言った。


「ルシェルの反応を聞いたら、ビルトっていう名前を聞いた瞬間の衝撃が一気に消えたわ。あ、一人だけ固まったままだけど……」


そう言いながら、イルミさんを見た。


イルミさんは呆然とした様子で、微動だにしない。


けれど、他のみんなは、エリカ様の言葉にうなずいていた。

この状況が全くわからないんだけど……。


「つまり、今ここにいる人のなかで、ビーさんの秘密に気づいていないのはルシェだけってことー。もう、にぶにぶでかわいい!」


ノーラン様が楽しそうに私の頭をなでる。


「そこが、ルシェルのいいところですよ……。おい、むやみに触るな」


王太子様の口調がガラッと変わって、ノーラン様の手を乱暴に叩き落した。


「つまり、みんなは名前を聞いただけで秘密がわかったってこと……?」


混乱する私。 


「そう、ルシェル、名前です。ビルトという名前だけを聞けばどんな人を思いますか?」


優しく言い含めるようにヒントをくれる王太子様。


「……元ルビーさん?」


ブフッとふきだした偽エルフ。


「ルシェがにぶすぎて、笑える!」


「あー、まどろっこしい! あのね、ルシェル。ルビー、いえ、ビルトは男の子よ! ビルトと聞いたら、だいたい男の子の名前でしょ? 異世界人の私でも、そう思うわ」


男の子? え、ビルトさんが……?


「えええええ!? ってことは、ルビーさんが男の子だったの? じゃなくて、ビルトさんが男の子? じゃあ、ビルトさんじゃなくて、ビルト君!? つまり、聖女じゃなくて、聖……聖……聖男子とか!?」


「聖男子って、なにそれー? もう、ルシェが混乱しすぎて変なこと言ってて笑える! かわいー!」


ノーラン様が、また、私の頭をなでようとして、王太子様にはたかれている。


「ルシェルがみんなの分をまとめて驚いてくれたのう。女だろうが男だろうが、聖なるお力を人々のために使ってくれる覚悟があるのなら、私も力を尽くそう。……ほら、みてごらん。もう、みんなビルトを受け入れとる。まあ、イルミは聖女に並々ならぬ憧れがあったから、まだ衝撃をうけとるが、心根の優しい人間だから大丈夫じゃ」


モリージャ様が、ビルトさんに優しく声をかけた。

ビルトさんの真っ赤な瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれはじめる。


「隠し事が大きすぎて、つらかったのう。安心して、全部話してしまいなさい」


モリージャ様が優しくビルトさんの背中をさすった。


やっと、ビルトさんも落ち着いたのか、ぽつりぽつりと話し始めた。


「先日、少し話したのですが、私は孤児で、治療院をしていたおじいさんにひろわれ、育ててもらいました。でも、この赤い瞳で、村のみんなには気持ち悪がられたんです。不思議な力がではじめると、更に状況は悪くなりました。……それで、おじいさんが山の中へと私をつれて引っ越しをしてくれて……と、ここまではお伝えしたとおりです。……それから、何年かたった時です。月に一回、おじいさんと私は町へ薬草を売りに行って生計をたてていました。いつも薬草を買い取ってくれる教会に行くと、その日は、教会の前に人がむらがっていたんです。なんだろうと思ってみると、その中心には小さな女の子がいました。銀色の髪をして、紫色の瞳をした、妖精のような女の子……」


一斉に、みんなの視線が私に集中した。

確かに色味はあっているけれど、私は妖精のようではないですよ?


「……その女の子が両手をかざすと、瞳と同じ色の、うすい紫色のきれいなもやのようなものがではじめて、町のひとたちの悪いところを癒しているようでした。……そう、ルシェルさんです」


「え、私!? 妖精だなんて、お世辞でも嬉しいわ。……じゃなくて、私、ルビーさん、いえ、ビルトさんに会ってたの!?」


ビルトさんはうなずいた。


「私が一方的にお見かけしただけですが……。私は、驚いて、おじいさんにあの女の子がだれかを聞きました。すると、聖女さまだと。私はその時……ルシェルさんを……妬んだんです……」


言いにくそうに、最後の言葉を絞り出したビルトさん。


妬んだ? 私を……?


あと2話で完結です。できれば今日中に更新したいと思っています。よろしくお願いします!

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