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とんでもない

私は驚きすぎて、息をのんだ。

みんなも、ルビーさんを見て固まっている。


というのも、ルビーさんの髪がすごく短くなっていたから。

茶色くて、艶のあるまっすぐな髪は腰までのばしていたのに、今や、後ろの護衛のノアくらいの短さなんだもの……。


「ええと、ルビーさん、髪、切ったの……?」


動揺しすぎて、あまりに、わかりきったことを確認してしまう私。


「はい。あの、この髪型、おかしいですか……?」


不安そうに真っ赤な瞳を揺らして聞いてきたルビーさん。


私はあわてて、ブンブンと首を横にふった。


「おかしいだなんて、とんでもない! 似合ってるわ! ものすごーく似合ってる。長い髪も似合っていたけれど、短くなると、その美しい瞳がひきたって……そうね。なんというか、もっと、ぴかぴかして、きらきらして、……いきいきして、うん、見てて、どきどきする! すごくいいわ!」


驚きすぎて、上手く言葉がでてこないまま、なんとか思いのたけを振り絞った私。


プハッと笑ったのはノーラン様。


「なにそれ、おっかしいの! ぴかぴか、きらきら、いきいき、どきどき? つまり、ルシェったら、イライラしてるってことー?」


「違うわ!」

と、意味の分からない捏造をする偽エルフをにらみつける私。


が、ちゃんとルビーさんに私の思いは伝わっていたよう。


「ルシェルさん、ありがとうございます」


そう言って、ルビーさんは恥ずかしそうに微笑んでくれた。


が、次の瞬間、悲鳴のような声があがった。


「なんてことを……。聖なる力が宿る聖女の髪を勝手に切ったのですか!?」

と、叫んだのは、神官のイルミさんだ。


今日は、神殿の仕事は聖女たちの代わりに、全て神官さんたちがやってくれている。

そのため、神官さんはひとりずつ交代しながら、顔をだしてくれる予定になっている。


で、最初はイルミさんがやってきた。

イルミさんはものすごく真面目で、聖女に並々ならぬ思いがある方だ。


神殿にやって来たばかりの頃、幼い私に、「聖女とはこうあるべき」という熱い思いを散々語られて、驚いた記憶がある。


そんなイルミさんだから、普段は大聖女のエリカ様を崇め奉っている。

なのに、今は、ルビーさんから、エリカ様に視線を移し、責めるように見ている。


その視線を見るなり、ロジャー様がエリカ様をかばうように立った。

そして、イルミさんがエリカ様に向けた、何百倍もの圧で見据えている。


が、エリカ様は、ロジャー様を手で押しのけると、淡々とイルミさんに言った。


「確かに、ルビーから髪を切ることは聞いてはいない。でも、髪を切ることを報告するようにとも言っていないわ。聖女の服は決まっているんだから、髪型くらい好きにすればいいし」


「そんな、何故!? 聖女の髪は特別なのに! それに、大聖女様も筆頭聖女様も今までの聖女様たちも皆さん髪は長かった!」

と、イルミさんが悲壮な顔でエリカ様に言い募った。


「まあ、そうね。でも、私の場合は、短い髪にしたいと思わなかっただけというのもあるけれど。そもそも、聖女の髪に力が宿っているというのは、人によるんじゃないかしら。少なくても、私は髪の毛から力がでているわけでもないし、関係ないと思うのよね」


「なら、試してみれば」


のほほんとした声で言ったのは、ノーラン様。


「そうね。それが手っ取り早いわ」


エリカ様もすぐさまのってきた。


何故か、ささっと腕まくりをして張り切っている様子。

勝負スイッチが入ったのか、挑発的にイルミさんを見ている。


うーん、今日は、アリシアさんの送別会とルビーさんの歓迎会なのに、変な感じになってきたわね。

ルビーさんはこれからもいるからまだいいけれど、アリシアさんは今日で最後なのに、いいのかしら……と、アリシアさんを見たら、明らかにワクワクしている様子。


楽しんでいるのなら、まあ、いいか。

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