Take.1 一人のクラスメート
実香乃りあ、15歳。普通の中3であり、普通の女。だがしかし、母が超有名女優・実香乃ルリであることは、普通ではないのは確かである。
…ある日のことだった。
「今度、学芸会があるのですが、何をやりたいか、意見はないですか?」
え、私は言いたくない。だって私って、お母さんが女優ってことだけで有名で、私はただのオマケだし。それに、私っていっつも、ぼーっと教室の片隅にいるだけだから、こんな所で意見を言うなんて、ありえない。
「もうー…誰も言わないから、学級委員の長谷部さん!何か意見はない?」
「私は…劇がいいと思います。それも…“実香乃さん”が主役で」
う…うそっ。私が劇の主役だなんて!!
「あ、あの…長谷部さん、なんで私なんですか?」
あわてて私は言う。だけど、長谷部さんは冷静に、
「あなたって、教室の片隅にいるけど、実際やってみれば、こういうこと、似合いそうだもの。それに、たまにはこういう風に、晴れ舞台に立ってみてもいいんじゃない?」
確かに、長谷部さんの言う通りかも知れない。それに長谷部さんは、私を“実香乃ルリの娘”としてではなく、“1人のクラスメート”として見てくれている。