第4話 国王との面会
「さて、ここだ。 この先にファシナシオン国王様がいる」
「緊張してきた……」
私はアルムに連れられて、ファシナシオン国王がいるという『玉座の間』の前にいた。
これから、国王との面会なのだが、顔を会わす前から緊張してきたのだ。
そもそも、私のいた世界でも国王と面会する時はあったのだが、よくわからない威圧感のせいで王族や貴族自体が苦手になってしまったのだ。
その為、面会は人型の使い魔に代理を頼んでいたのだが、今の私は使い魔は使えないし、ここは異世界だ。
この世界の王族は、話しやすければいいんだけど……。
「じゃあ、行くぞ。 まぁ、基本的にフランクな方だし、気にする必要はないが、最低限のマナーは考慮した方がいいかもな」
「は、はい……」
うう……。
ますます緊張してくる。
もうすぐ国王と顔を会わせるんだ……。
ヘマしない事を心掛けないといけないな。
というか、アルムの表情がどことなく向こう側にいる国王に会いたくはないという様子なのだが……?
「国王陛下、アルム・クレスト入ります。 保護した女性も同行しております」
「うむ、入ってくれ」
扉越しに国王の声がしたかと思った直後、ギギギと音を鳴らしながら扉がゆっくり開いていく。
人が入れるスペースになってから、アルムを先頭にして中に入る。
そして、玉座にはダンディーな男性と綺麗な女性、そしてアルムと同い年に見える若い男性とやや幼い女性がいた。
いずれも王冠もしくはティアラを着けているので王族なのだろう。
アルムは、ある程度国王に近づいてからそのまま跪く。
私もアルムに倣うように跪いた。
「ああ、そこまで畏まらんでいい。 楽にしてくれ」
国王からそう言われたので、アルムも私も立ち上がる。
「そこの女性も無事に目が覚めたのだな? 私は国王のトリアス・エル・ファシナシオンだ」
「ルキア・フィーブルです。 保護してくださって感謝します」
「礼には及びませんわ。 私は妃のアウロラ・エラ・ファシナシオンと申します。 宜しくお願いいたしますわ」
「はい、こちらこそ」
国王と妃が私に話しかけている間ではあるが、アルムが何故か不機嫌だ。
一体、どういう事なのだろうか?
「国王陛下、そろそろ本題を」
煮えを切らせたアルムがそろそろ本題をと国王に要請した。
いや、本当にどうしちゃったの……?
「おお、すまんな。 さて、本題だがルキア嬢。 ゲートから現れた君はこの世界の現状とかは?」
「はい、アルム大尉から粗方聞きました」
何事もなかったように振る舞う国王から聞かれた問いには、私はそう答えた。
これに関しては嘘ではない。
アルムからはMGTまで見せて貰っているからね。
「現状、帝国とも膠着状態、魔王軍ともいつ襲撃してくるかは不透明。 だが、君にはこの戦争に参加しろなどとは言わない」
「え?」
「君は事故でこの世界に飛ばされたのだ。 今はしっかりしているように見えるが、内心ではまだ混乱しているのだろう?」
「う……」
まさか、今の自分の本当の状態を見抜かれるとは思わなかった。
たしかに、私はこの世界に飛ばされたばかりで、文明の違いや戦争の真っ只中である現状に頭が混乱しっぱなしなのだ。
事故で飛ばされたようなものだからか、国王は私にはその戦争への参加を要請しないと言ったのだ。
「ただ、異世界からの転移は状況問わずに元の世界に戻ることは出来なくなっている。 なので、ルキア嬢のために支援はして置く予定だ」
ああ、元の世界には戻れないんだ。
これも内心予感がしていたが、いざそれを言われると流石に衝撃を受ける。
「今は考えさせてください」
あまりにも情報量が多すぎる。
それに元の世界に戻れないという事実によって精神上落ち着かないので、今はこの答えしか言えないのだ。
「分かった。 ひとまずルキア嬢には部屋を与えようと思う。 時間はたくさんある。 落ち着いてから決めるといい」
「食事もこちらでご用意いたします。 希望があればメイドにお伝えくださいね」
「分かりました」
「では、纏まった所で自分はここで失礼します。 これからミーティングがありますので」
「あっ、アルム!」
「兄様!!」
(……え?)
私に関する話が一応纏まった所で、終始不機嫌なオーラを纏ったままだったアルムが一礼してから速攻で去っていく。
そんな彼を呼び止めようとした二人……特に王女様がアルムに対しての呼び方に違和感があった。
今、兄様って言ったよね?
一人の男性……王子様であろう人はアルムを追って出て行ったようだ。
「……申し訳ありません、ルキアお姉さま」
呆然としている私にさっきの幼めの王女様が声を掛けて来た。
しかし、お姉さまねぇ……。
「いえ、確かに訳が分からなくて驚きましたが……もしかしてアルム大尉は?」
「はい、お察しの通りです。 アルム兄様は第二王子でもありました」
ん?
今、過去形で言った?
「アルムは第一王子で兄であるサリエル、そして娘のセラフィーナにコンプレックスを抱いてしまったのだ」
この疑問に答えたのは国王だった。
というか、アルムも王族だったの!?
見た目からはそうは思わなかったし、軍服が似合うから根っからの軍人なのかと……。
あ、ついでに第一王子の名前がサリエル、王女様がセラフィーナだというのも分かった。
しかし、コンプレックスか。
アルムが抱えるコンプレックスって一体何だろう?
聞いてみるか。
「その、アルム大尉のコンプレックスは……どういうものなのですか?」
すると、王妃であるアウロラ様が重い口を開いたのだ。
「アルムは大臣たちからサリエルやセラフィーナと比較されたのです。 生まれ持って天才であるサリエルやセラフィーナと違い、アルムはそうではなかったからだとか……」
どうも思った以上の重い内容のようだ。
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