表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導戦記マギ・トルーパー  作者: イズミント
第1部 邂逅編
4/35

第3話 『マギ・トルーパー』

「ルキア?」


「はっ!? す、すみません! こんな大きい物が兵器だなんて信じられなくて……」


「まぁ、これは人が乗らないと動かないからな。 一応、魔力によって自動で動く小型機もあるが、偵察以外は使えなくてね」


 いや、小型機まであるんですか。

 この世界は、私の予想を遥かに上回っている気がしてきた。


「さて、『マギ・トルーパー』だが略称表記はMGTとなってる。 報告やメモなんかはそれで記載されるのが定例だしね」


 なるほど。

 わざわざ正式な名称を書くのも面倒臭いし、分かりやすい略称なら通じるだろう。


「んで、使っている装甲はアダマンタイト鉱石を加工した『アダマンチウム』を使用している」


「ぶっ!? あ、アダマンタイト!? この世界ではたくさん採れるんですか!?」


「ん? 君の世界はそうじゃないのか?」


「私の世界じゃ、貴重な鉱石なのでなかなか採れないんですよ」


「なるほどなぁ。 この世界は、ここ『ファシナシオン王国』を中心にアダマンタイトが採れる鉱山が沢山あるからな」


「嘘でしょ……」


 この世界はアダマンタイトが普通に採れるだなんて……貴重な鉱石扱いになってる私の世界では考えられない事だ。

 世界が違えば、文明が違うのかも知れない。


「マギ・トルーパーの燃料は操縦者の魔力なんだ。 つまり、操縦者自身の魔力が多ければ多い程、長時間稼働できるんだ」


「操縦者の魔力で動くんですか?」


「そうだ。 それ故にマギ・トルーパーを動かせるのは、一定の魔力がある者に限られる。 まぁ、これ一機でも魔王軍の中級クラスまでなら渡り合えるがな。 戦い方次第だか」


 なるほど。

 操縦者の魔力で稼働するのなら、やはり長時間稼働できるレベルでの魔力は必須なわけだ。

 しかし、一機だけでも魔王軍の中級クラスまでは大丈夫らしい。

 とはいえ、アルムの発言内容からして、戦い方が不味いと厳しいともとれる。

 

「このマギ・トルーパーの元となった人型の存在は地下に封印しているんだ。 俺達みたいな軍は【オリジネイター】と呼んでいる。 王家や上層部は【オーパーツ】とも呼んでいるが」


 元となった存在、いわゆる【オリジネイター】は、地下のどこかに封印か。

 確かにオーパーツとも呼ばれているなら触れてはならない部分もあるんだろうな。


「それらを魔王軍に対応するための力として、最初は帝国とも協力してかなりの数を作り上げたんだが……」


 当初は帝国も協力的だったのか……。


「なら、どのタイミングで帝国と敵対するように?」


「数年前に皇帝が変わってからだ。 前の皇帝が死んでキスクという第二皇子が第一皇子を差し置いて皇帝になった時に、全てのマギ・トルーパーは帝国のモノとすると宣言したのがきっかけだ」


 まさかの内容に私は驚いた。

 アルムから聞いた内容を纏めると、ファシナシオンが主体となってマギ・トルーパーを作り、帝国はそれを手伝っていたに過ぎない。

 それが新たな皇帝は、全てのマギ・トルーパーを帝国のモノにすると宣言したのだ。


「でも、反発や批判はあったんでしょう?」


「ああ、ファシナシオン王国やその周辺国を含めた他国は、帝国のその宣言に批判したりしたうえで、制裁処置も行った。 だが、現皇帝キスクは撤回するどころか、機体の幾つかや設計図、そして魔導技師(マギメカニック)達の何人かをここを含めたあらゆる国から奪い取ったんだ」


「何でそこまでして……?」


「世界全てが帝国の下で管理すべしというキスクの歪んだ考えがそうさせた。 前の皇帝に仕えた者達はキスクに枷を付けられて逃げる事が出来ず、出し抜かれた第一皇子とその一派も行方知れずさ」


 キスクという男の考えが、いまいち理解できない。

 世界を帝国の下にて管理?

 その先駆けとしてマギ・トルーパーすべてを帝国の物だと宣告したの?

 まるで、『お前の物は俺の物』というジャイアニズムみたいな感じとしか思えない。


「技師も機体も設計図も奪われたファシナシオンとその周辺国はかなり激怒した。 ルールを無視して我が物顔で歩むのなら帝国を駆逐すると宣戦布告をした。 これが帝国との戦争の始まりだ」


 これが帝国と戦争を行うきっかけとなった話だ。

 元々、対魔王軍のための力だったのが、今は戦争の道具として使われている。

 情けないとは思うが、キスクという帝国の危険な考えを持つ皇帝相手じゃ、そうならざるおえないのかもしれない。

 そんな中、ふと思った事をアルムに聞いた。


「でも、これって魔王軍に利する行為なのでは?」


「それは自覚してるさ。 誰もがな。 だが、現皇帝キスクはそう考えない。 世界を管理という事は奴にとっては魔王軍も管理するという事だから、現在の所は魔王軍はこちらには仕掛けてきていない」


「つまり、魔王軍は今は帝国にだけ牙を剥いてる状況だと?」


「そうだ。 その上で帝国は俺達にも牙を剥いている。 それに乗じていつ魔王軍も連れて来るのかと言う不安もあるから、気が抜けない状況なのさ」


 ここまでこの世界の状況を教えてもらったが、こんな状態になったのはキスクという現皇帝のせいなのだと理解した。

 しかし、どれだけ戦争が長引いているのかは知らないが、疲弊はしないのだろうか?


「あ、アルム大尉」


「ん、どうした、フェリア軍曹」


「国王様がお呼びだそうです。 至急来るようにと」


「ああ、分かった。 すぐに行く」


「はい……えっと、そこの女性の方も今目覚められたのですか?」


「ええ、現状説明の為にアルム大尉にここを案内された所です」


「でしたら、あなたも国王様のいる『玉座の間』に行った方がいいでしょう。 用件はあなたの事ですので」


「ルキアの件か。 じゃあ行くか」


「そうですね……あの、その前にお手洗いは……」


「えーと、幸い8番デッキの隣にトイレがあるからそこを使ってくれ」


「は、はい」


 大方の説明が終わり、フェリアという女性が来たことで緊張の糸が切れたのか、一気に催してしまった。

 幸いアルムの言うように8番デッキのすぐ隣にトイレがあったので、そこに向かって済ませてから、アルムと共に国王様のいるという『玉座の間』に行く事になった。

 だけど、心なしかアルムの表情が優れなかったような気が……?

 


よろしければ、広告の下の評価(【☆☆☆☆☆】のところ)に星を付けるか、ブックマークをお願いします。


作者のモチベーションの維持に繋がります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ