第29話 それぞれの動向②
今回はかなり短めです。
そして第1部が終わります。
【Side オライオン帝国】
「連合軍の戦艦が完成、発進されたか」
「はっ! さらに我が国に情報を流してくれたアーリントンもその際に断罪されたようです」
「おのれ……! 連合軍め!」
オライオン帝国の帝都にある皇帝の別邸で休んでいた皇帝キスク・グラム・オライオンの元に、大臣が緊急報告をしに来たようだ。
戦艦の完成と発進、そして帝国に情報を流したアーリントン達の断罪を聞いたキスクは歯ぎしりしていた。
「皇帝陛下、戦艦を得た連合軍相手に兵士と無人機だけでは限界かと」
「うむ……。 だが、無人機は試作段階で魔族から取り出したマギアクリスタルが必要だ」
「とはいえ、向こうは戦艦だけでなく【オーパーツ】を操る娘もいます。 指揮官クラスの者を連合軍に回すべきかと」
「ふむ、なら最近この帝国付近に現れた娘が率いる部隊を連合軍討伐の部隊に回そう。 その娘はどうしてる?」
「同じく魔王軍の土地の西部を攻めている所です。 少し遠方なので時間はかかるかと」
「構わん。 他の精鋭部隊と交代して時間が掛かってでもこの付近の基地を拠点に連合軍を攻撃させるのだ」
「分かりました。 すぐに総司令部に伝達します」
キスクの命令を聞き入れた大臣がすぐに別邸を出る。
そして、一人になったキスクはすぐに正装に着替え、帝国の城を目指す。
「何としても戦艦を破壊せねば、我が悲願は叶わぬものとなってしまう。 下手したら第一皇子派閥が士気を上げる材料にもなる。 そうならぬように何とかせねばな」
そう独り言ちながら、キスクは別邸から帝都にある城を目指した。
すでに第一皇子の派閥が、士気が上がている事を知らずに……。
◇◇◇◇◇◇◇◇
【Side ???】
「え? ここの討伐を他の部隊に任せて、あたし達は連合軍を討てと?」
「ああ、大臣や総司令部経由で届いた皇帝陛下の命令だ。 どうも戦艦が完成ならびに出航し、【オーパーツ】も起動している」
「え!? 戦艦!?」
「向こう側が作り上げた魔力で動く魔導戦艦だ。 我々は妄想の産物と嘲笑っていたが、まさか現実に完成させるとはな」
一方で、魔王軍の土地の西部を攻めているある少女が率いる部隊が滞在している前線基地に司令官の男が少女にキスクからの命令を伝えていた。
その命令の内容を聞いた少女は驚いていたが、その理由を聞いた後で納得はしたようだ。
「戦艦が完成かぁ。 それだと厄介よね。 でも、それがあたしの部隊を連合軍討伐に駆り出すには少し理由が弱いね。 おそらく後者かしら?」
「そうだな。 先ほども言ったように【オーパーツ】を操る娘が連合軍に保護されているようでな」
(となると、多分ルキア辺りかな? まさかあの底辺魔女もこの世界に来ていたとはね)
少女が少し顔を歪めながら、心の中でそう呟く。
少女はルキア達を知っている。
それは、この少女がルキアと同じ世界からここ【マナトピア】に転移させられた者だからだ。
彼女から見れば、ルキアは底辺魔女でしかないと考えているようだが、ルキアは元々膨大な魔力を秘めたが故に枷が掛かった状態で色んな戦い方で切り抜けた少女なのだ。
だが、この少女はそんなルキアを一切認めない様子なのだ。
「戦艦や【オーパーツ】が動いているとなると第一皇子一派が動いてくる。 それこそキスク皇帝陛下の悲願が妨げられる」
「分かったわ。 引継ぎの部隊はいつ来るの?」
「場所からしておよそ一週間後になるな」
「じゃあ、一週間後に出発するって、皇帝陛下に伝えていただけるかしら?」
「分かった。 伝えておこう。 油断はするなよ」
「ええ、分かってるわ」
司令官の男が去って、一人になる少女。
「まさか、ルキアが【オーパーツ】を動かすとはね。 底辺魔女ごときが何をやっても無駄な事を改めて教えさせてあげるわ。 そう、この上位魔女のゼネア・ベルベットがね!」
少女ことゼネア・ベルベットは、不敵な笑みを浮かべながらそう独り言ちる。
当のルキアが【オーパーツ】ことアパタイトの性能を引き出して、強くなっている事を知らずに……。
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