第20話 アルム小隊の休日
【Side フェリア】
『そうか、そっちの小隊に例の女性が入ったのか』
「うん、保護の意味も兼ねてね」
『確かにそれなら連合軍で保護した方がいいいだろうな。 そっちの国には国賊がいるんだろう?』
「そうなのよ。 さっきの帝国軍の南部からの侵攻もその大臣が絡んでたみたいで……」
帝国軍の侵攻から少し経って、ルキアさんも落ち着いた所で、私ことフェリア・イスマイールは現在同じ連合軍に属している国家【フィーアクロイツ共和国】の基地にいる青年と【マギモニター】を使って話をしていた。
私が話している青年の名前はジョージ・マルゴーという人で、階級はアルム大尉より一つ下の中尉なのだけど、実は彼は私の恋人でもある。
ファシナシオン連合軍は、階級制度はあるけど基本的にフランクに話ししてもいいようだ。
とはいっても、流石に司令官などの上のクラス相手には、みんな敬語や丁寧語で話しているけど。
『そのルキア嬢は、どうしてる? フェリアが属している小隊は今日と明日は休みだろう?』
「ルキアさんは、アルム大尉と一緒に王都の無事だった場所の散策だよ。 ルキアさん、あれからアルム大尉を意識してるみたいだし」
『そうか。 アルム大尉もようやく春が来るか? あいつの抱えてる過去が過去だから、祝福したいんだがな』
「とはいえ、お互い押し合っている印象だし、ルキアさんが抱えているのが恋心だというのが分からないままだし、時間は掛かるよ。 それに……」
『あの大臣たちがそれを許さんと割り込む可能性もある……か』
そうなのよね。
私は、ジョージさんと同じくアルム大尉とルキアさんの恋を応援したいけど、アルム大尉をサリエル殿下のパーツとしてしか扱わないあの国賊の大臣たちが邪魔をしてくる可能性だってありえる。
二人が恋人になるには、まずあいつらを排除しないといけない。
『そっちの戦艦……一番艦【フィールラスクス】が出航するのは王都の復興が終わってからすぐだったな?』
「うん。 それ故、帝国軍や国賊の大臣たちが邪魔をしに来るかもしれないしね」
『ただ、逆に大臣たちが相手の場合はそこが狙いどころだな。 これ以上そいつらの暴挙は許さないしな』
「そうだね。 逆に大臣たちを一掃するチャンスだとも捉えておくわ」
『その意気だ。 ああ、話しは変わるが……』
私は別の話題に切り替えたジョージさんと久しぶりに話を弾ませた。
そして、落ち着いたらデートでもしようと言う話も取り付けた。
まずは、ルキアさんとアルム大尉の応援だけどね。
◇◇◇◇◇◇◇◇
【Side ザック】
「カロン君! あなたねぇ」
「い、いや、それは言葉のあやだって……!」
(やれやれ、またいつもの光景か)
俺、ザック・アルスターはアルム小隊の一員で機体を整備する整備士を兼ねている。
アルム小隊の休暇の為に、他の小隊の整備員に機体の整備関連の引継ぎをしてから格納庫を出たら、カロン軍曹とミュリア軍曹のやり取りに出くわした。
内容までは分からないが、大抵はカロン軍曹のセクハラめいた発言や行為にミュリア軍曹が怒るというパターンだ。
だが、怒ってるミュリア軍曹も表情的には満更ではない感じなので、他の隊員や整備員もいつものイチャコラかという感じで温かく見ている。
あの二人、恋人同士なんだけどなぁ……。
「あ、ザック軍曹」
「あれ、フェリア軍曹?」
食堂に向かい、昼食を食べようとした時にフェリア軍曹が食堂にやって来たのだ。
「これから昼食ですか?」
「そうっすよ。 カロン軍曹たちの相変わらずなやり取りを見ながらここに来たっす」
「ああ、あの二人かぁ。 相変わらずだねぇ」
カロン軍曹たちのやり取りを見ながら食堂に来た事を言うと、肩を竦めながらため息をついたフェリア軍曹。
ミュリア軍曹とは幼馴染らしく、フェリア軍曹はよく彼女をフォローしていたんだとか。
「そういえばルキアさんとアルム大尉は?」
「あの二人なら今は王都の散策ですよ」
「おおぅ、アルム大尉がエスコートっすか?」
「そうみたいです。 でも、私はアルム大尉とルキアさんの恋を応援したいんですよね」
「流石遠距離恋愛をしているフェリア軍曹は格が違った」
「ふふ、さっきまで恋人と話をしてきたので問題ないです。 というかザック軍曹も遠距離恋愛中じゃないですか?」
「うぐっ!」
フェリア軍曹にも指摘されたが、実は俺もフェリア軍曹と同様に遠距離恋愛中なのだ。
幸いに連合軍は恋愛はNGではないのが救いか。
ちなみに相手は、魔法国家【ロゼッタ魔法国】出身の魔法少女で、魔法少女部隊と言う部隊のリーダーだ。
使っている機体もそれっぽいフォルムらしいが、部隊全員がノリノリの為、かつては機体の扱いが荒く整備士泣かせの部隊だった。
何でそんな部隊のリーダーが俺と付き合う事になったのかと言うと、出張で整備に来た時に俺がリーダーを注意したことらしい。
言ってる意味がわからないとは思うが、そうも当時の魔法少女部隊はロゼッタ国民や上層部など誰も注意しなかったらしい。
リーダーが継承権がないとはいえ、王女様だったから。
しかし、余りにも機体の扱いが荒かったのでリーダーを注意したのだ。
それがリーダーの彼女が目をキラキラしながらお礼を言ってきた事で色々あって、付き合う事になった。
(王女様だから注意してくれなかったっていうのも問題なんだよなぁ)
俺の今の彼女であるロゼッタ魔法国の王女、マイア・ロゼッティアはさっきも言ったが継承権はないが、王女様の身分だったので、機体の扱いが荒くても周りが注意しなかった。
彼女自身はそれが辛かったらしく、俺が注意したことでやっと自分を注意してくれる人がいたという形で喜んだようだ。
それ以来、少しの間機体の扱い方とかを教え、他の整備士にもそれを引き継がせた。
そして、帰り際に連絡先を交換して今に至るわけだ。
「まぁ、彼女に関しては後で話しますよ」
「頑張ってくださいね。 それでは、私は二人を諫めてきます」
(ああ、エスカレートしだしたのか)
流石にここまで聞こえる罵声と悲鳴が飛び交う様子に業を煮やしたフェリア軍曹がミュリア軍曹たちを止めるべく食堂を出た。
うん、フェリア軍曹は苦労人だな、間違いない。
そう思いながら、俺は昼食を食べ終え、自室に戻り彼女であるマイアとのモニター越しの会話を始めるのだった。
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